パルス幅変調方式でLEDを駆動すれば、LEDの長所を生かすことができる。今回はパルス幅変調方式を用いた駆動回路を解説
前回の“LED駆動回路設計 〜基礎編〜”では、LEDの電気特性および基本的な駆動回路について説明しました。残念ながら、抵抗型駆動回路や定電流源型駆動回路は、広範囲の入力電圧、大電流の用途に対しては十分な性能を有しているとはいえず、LEDの性能を生かせないことがあります。ところが、変調方式の1つである“パルス幅変調方式”を用いてLED回路を駆動すれば、LEDの持つ多くの長所を生かすことができます。今回の連載では主にパルス幅変調方式を用いた駆動回路について解説します。
パルス幅変調のことを英語でPulse Width Modulationといい、それぞれの頭文字を取ってPWMと略します。PWMはパルス波のデューティ比を変化させて変調する方式です。パルス波のデューティ比は、図1に示すようにパルスの周期、オンタイム、オフタイムの関係で表され、次式のように定義します。
Tsw(一周期)のことをスイッチング周期といい、さらにfsw=1/Tswのことをスイッチング周波数と呼びます。
PWMを用いた駆動回路では、デューティ比を増減させることで、パルス一周期分の平均値を制御することができます。この原理を用いて、回路上のスイッチデバイス(トランジスタ、MOSFET、IGBTなど)のオン時間(オフ時間)を制御すれば、LEDへ流れる電流を効率的に調節することが可能です。これが次に説明するPWM制御です。
PWM制御回路の1つの特徴は、パルス幅を変えるだけでさまざまな出力を制御できることです。PWM制御の原理を理解するために、図2に示す降圧回路を使います。この回路では24Vの入力電圧を12Vへ変換し、負荷へ供給する必要があります。負荷は単純抵抗としています。電圧変換回路の実現法はいろいろありますが、PWM信号を用いた場合はどのようになるでしょうか。
図2の降圧回路にPWM制御を取り入れた回路を、図3に示します。スイッチデバイスとしてMOSFETを使用しています。PWM信号のスイッチング周波数を20kHzとすると、スイッチング周期は50μsになります。PWM信号がHighの状態になると、スイッチがオンになり、入力から負荷へ電流が流れ始めます。PWM信号がLowの状態になるとスイッチがオフになり、入力と出力が遮断され、電流は流れなくなります。
ここではPWM信号のデューティ比を50%で固定し、スイッチへ印加してみます。
スイッチがオンの時間分だけ電流が流れ、入力電圧が負荷へ供給されます。スイッチがオフの時間は電流が流れませんので負荷への供給電圧はゼロとなります。図4の緑色の波形、V(OUT)は負荷で観測される出力電圧です。
入力電圧は直流ですが、出力電圧はパルス信号として得られます。負荷の前段(スイッチの後段)に平滑回路を挿入すれば、図4で示す茶色の波形を得ることができます。出力パルスの平均値は約12Vであり、仕様どおりの直流電圧を負荷へ供給できることが分かります。
では12Vではなく、6Vの出力電圧を得たい場合、どうすればいいでしょうか? PWM制御の利点は実はここにあります。単純にパルス幅を変えればいいのです。実際、デューティ比を25%に設定するだけで平均出力電圧6Vを得ることができます。図5と図6は、このときの回路と解析結果を表しています。
以上の結果から、この降圧回路における入出力電圧の関係は、PWM信号を用いて、下記のように表せます。
出力電圧=(PWM信号のデューティ比)×(入力電圧)
つまり、PWM信号のデューティ比を変えるだけで、任意の出力電圧を作ることが可能なのです。次に、実際に製品設計に使用する降圧コンバータ回路を用いて、LEDを駆動する方法について説明します。
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