電気回路、熱対策、光学といったLED照明の設計において考慮すべきポイント、そして照明用LEDとこれまでの光源との違いを解説します
近年、環境への関心が追い風となり、次世代照明としてLED照明に注目が集まっています。展示会に足を運べばLED関係のブースは多くの人でにぎわい、実際に普段の生活でLED照明を見掛けることも多くなってきました。一般家庭で購入できる価格の電球型LEDランプが、大手照明メーカー各社から販売されています。また、蛍光灯型LEDランプも、さまざまな会社が製品を発表しています。このような状況で、LED照明に参入しようとしている会社も多いことでしょう。
しかし、LEDは電球や蛍光灯といったこれまでの光源とは異なる特性を持っています。単純に購入してきたLEDパッケージを並べただけでは、よい照明機器を作ることはできません。LEDの特長を生かした照明機器を設計するためには、これまでの光源とは異なる、LEDにふさわしい設計が必要になってきます。
本連載では、LED照明機器を設計するうえで考慮すべきことを解説していきます。具体的には、電気回路、熱対策、光学について次回以降で取り上げていきます。今回は導入として、照明用LEDの概要とこれまでの光源との違いについて触れたいと思います。
照明用に使用されているLEDは、発光光量(光束)が多く白色で発光するものです。照明用にLEDが使えるようになったのは、青色LEDの発明と発光効率の上昇によるところが大きいです。
白色LEDを実現する方法には、主に2つのタイプがあります。1つはLEDチップと蛍光体を使用するもので、もう1つはRGB 3色のLEDチップを使用するものです。蛍光体を使用するタイプの方が現在の主流になっています。
蛍光体を使用するタイプは、青色LEDチップと黄色蛍光体を組み合わせたものが一般的です。LEDチップから出た青色光は蛍光体に当たり、一部の光は黄色光に変換されます。そして、変換された黄色光と変換されなかった青色光が混ざって白色となります。蛍光体の量を調整することによって白色の色温度をコントロールしているため、発光色は製造時に決まり、後から調整することはできません。
また、青色と黄色の組み合わせでは赤色や緑色の成分が足りず演色性が良くないため、青色LEDチップに赤色蛍光体と緑色蛍光体を組み合わせたり、紫外LEDチップにRGB蛍光体を組み合わせたりすることによって演色性を上げているものもあります。
もう一方のRGB 3色のLEDチップを使用するタイプは、RGBそれぞれに明るさを調整できるため、白色だけでなく、さまざまな色を作れるのが特長です。しかし、LEDチップを多く使うため、コストが高くなってしまいます。
それでは、照明用LEDと電球や蛍光灯との違いについて、熱、電気、光の特性ごとに見ていきましょう。
LEDは発熱が少ないものというイメージがありますが、照明用LEDでは消費電力が数Wクラスのものを複数個使うため、かなりの発熱があります。また、LEDは効率が良いといわれていますが、効率のチャンピオンデータは、微小電流で動作させたときのものです。大電流、高温の状態では効率が低下します。
また、蛍光体タイプのLEDでは、波長が変換される際にエネルギーをロスするため、これも熱になります。高熱になると、LEDチップ、蛍光体、パッケージ樹脂などの寿命が低下するという問題もあります。従って、LEDの特長である“高効率”“長寿命”を生かすためには、LEDの温度をいかに上げないかが重要になります。
LEDを点灯させる電源は、電球や蛍光灯とは大きく異なります。電球は100Vの交流に直接つなげることができます。蛍光灯は安定器やインバータなどの回路がありますが、これも100Vの交流です。これらに対してLEDを点灯させるには、直流の定電流を必要とするため、100Vの交流から変換する必要があります。せっかくLEDの発光効率が良かったとしても電源の効率が良くなかったら照明器具全体としての効率が落ちてしまいます。効率を重視するLED照明だからこそ、電源の効率に注意を払う必要がこれまで以上にあるのです。
LEDを調光する方法には、定電流を流してその電流を変える方法と、パルスで駆動してそのパルス幅を変える方法があります。LEDは電子と正孔が再結合するときに発光するため、光束は電流に依存します。電流が少ない場合は光束と電流はほぼ比例しますが、LEDの電流が大きくなると発熱によって発光効率が低下するため、比例しなくなってしまいます。
また、パルス幅を変える方法では、「ちらつきが分からないくらい高速にパルス点灯している光の明るさは、時間平均を取った明るさとして感じる(Talbot-Plateau効果)」ため、パルス幅に比例して明るさを変えることが可能です。
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