実は今年、自らの開発そしてモデル作成に追われていたために試走会や地区大会の取材を昨年度ほど密着して行うことができませんでした。それでも大会2日間を通して、参加者の皆さん、そしてボランティアで協力されている運営スタッフの皆さんがETロボコンにかける熱い想いをたくさん感じることができました。朝早くから皆さん、本当にお疲れさまでした!
ここからは、東京地区実行委員長 宮川 芳之氏(ソフトウェアコントロール)や各部門に入賞した数チームのインタビューを紹介します。
――大会本番に使用された競技コース上に、いくつかフィギュアが置いてあることに気付いた方もいると思います。実はそのフィギュア、実行委員長の私物であるという噂が……! 2日目には司会者の方から「実行委員長コース」という命名まで。そんな意外な趣味を持つ実行委員長に今年の東京地区大会を振り返ってのお話を伺いました。
「2月の記者発表会から始まり、東京地区は無事ゴールを迎えることができました。実行委員長となって3年目の今年はモデル審査合宿にも参加しましたが、各チーム工夫を凝らした戦略の数々にすごいなと感じるとともに、審査する側の大変さ(苦労)をあらためて感じました。東京は運営する面からいうと、今回も地区大会2日間ともに開始時間を30分遅らせたように、直射日光が上から入ってきてしまうという厳しい環境です。今年は昨年よりも日程を1週間ほど早め、計算では晴れない予定だったのですが、見事に光が差し込んでしまって申し訳なかったなと思います」
「しかし今年、救世主が現れました。2日目に(NXT部門で)シルバーモデルを受賞したチーム『まいまい』さんが外乱光の中でもライントレースできる工夫(光センサーを点滅させることで外乱光の影響をなくす手法)を見付け出してくれました。きっとこれが東京地区のベースになるのかなと思います。11月にはチャンピオンシップ大会が開催されますが、地区大会で勝ち上がったチームは、残念ながら敗退してしまったチームの分も活躍してきて欲しいと思います。そして今年こそは、全国最大規模を誇る東京からチャンピオンが出ることを願っています。皆さん本当にお疲れさまでした」
――続いて、大会1日目に見事2冠(モデル、走行ともに1位)を獲得したサヴォイサの2人です。競技部門後に行われたワークショップでは、他チームからモデルについてたくさんの質問を受けていました。なお、2人は昨年度もETロボコンに参加し、チャンピオンシップ大会に出場しています。
「実は昨年のチャンピオンシップ大会のときに納得のいくモデル評価がもらえず、親睦会の場で“どこがダメだったのか”と審査委員の方に聞きに行ったんです。そこで知り合った本部 審査委員の幸加木さん(リコー)にメールで指導してもらったり、自ら執筆された本を贈っていただくなどして勉強しました。とても心強かったです」
「走行についてはやはりコース全体を通しての練習が必要だったので、5月に母校の専門学校に帰り、5日間ほどで仕上げました。とにかく時間との勝負でした。地区大会では安全走行を選択しましたが、チャンピオンシップ大会ではマイナスリザルト(実際の走行タイムをボーナスタイムが上回ること)を目指します!」
――1日目NXTのモデル部門でシルバーモデルを獲得した芝浦雑技団は、オージス総研の新人3名で構成されたフレッシュなチーム。「配属されたらETロボコンに出ることが決まっていた」という彼(彼女)らが苦労した点とは?
「実際に作業をし始めたのは7月くらいでした。なので、取り掛かったらすぐに試走会という感じで、そこではほとんど何もできていないうちに終わってしまいました。その後モデルの提出が控えていたので、全員でモデリングに取りかかって、その期間が1番苦労しました。実装は全員で分担して行いました」
――インタビュー直前には南関東地区に出場している同じ会社のチームの結果を気にしていたばーでぃ(改)。社内で4チーム参加しているということで、「あっちのチームすごい進んでいるらしいよ」といい合うなど、お互い良い刺激になっていたそうです。
「3人のうち2人が昨年からの引き続きだったのですが、昨年のようにコースアウトしてしまうなどのハプニングもなく、順調に走行できました。おかげで走行、総合ともに2位という結果でよかったです」
――ETロボコン初参加のチームキトクは、1日目NXTの総合4位で見事チャンピオンシップへの切符を勝ち取りました。上司のすすめで参加したというETロボコンはどうだったでしょうか?
「最後の最後まで光センサには悩まされました。まさかあんなにきまぐれだとは……。試走でもギリギリまでずっと焦っていたのですが、本番うまく走行できたのでよかったです。1番役に立ったのはPID制御でした。ロボコン経験のある人から聞いていたので、勉強して実装してみました」
――モデルでは“バレリーナ走行”というユニークな戦略を記載していた田町レーシング(オージス総研)。残念ながら地区大会ではその技を封印していましたが、チャンピオンシップ大会では披露してくれるそうです。また、モデル審査では東京地区2日間通して唯一のA評価!(A〜Cまであります)。同じ会社の芝浦雑技団がモデル部門で3位に入賞したときには「正直1番焦ったのは僕らです」というエピソードも語ってくれました。
「オージス総研はモデルを強みに出している会社なので、モデル部門で1位を取れてうれしいです(総合も1位でした)。バレリーナ走行は点線カーブを回転しながら走るというものなのですが、チャンピオンシップ大会では、それを披露することが使命だと思って挑戦します。昨年は東海地区に1位を奪われましたが、今年は必ず東京地区が優勝します」
「モデルについては5枚という限られた中で何を伝えるかというのをとても考えました。本当は伝えたいことがたくさんあるのですが、設計まで盛り込んでしまうとあきらかに紙面が足りません。よって上流部分の要求仕様から始まり、それを自分たちがどう捉えたのか(競技規約を自分たちがどう捉えたのか)というところを熱く語って、それに沿った分析を進めていくと、どうなるかというのを伝えることに注力しました」
「今回はそれが功を奏してというか、評価されたのでうれしいです。新人のときにもチームを組んで参加したのですが、そのときは思うような結果が出ず、それから4年間、業務で経験を積み、今年はその知識や経験を踏まえて挑みました。普段は社内でモデルの良し悪しを評価される機会はあるのですが、社外の人の評価を受けて、良いと言ってもらえる機会というのは今回(ETロボコン)が初めてだったので、本当にうれしいです。次はチャンピオンシップ大会で、全国レベルで評価されることを目指して頑張ります」
こうして無事に東京地区大会は幕を閉じました。チャンピオンシップ大会へ出場するチームは引き続き、また残念ながら地区大会で敗退してしまったチームはまた来年、東京地区でお会いしましょう! 皆さん、本当にお疲れさまでした(連載は続きます)。
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