決していいとはいえない景況だからこそ、地に足の付いた戦略づくりが重要。不安にあおられることなく、全体最適を目指す戦略づくりのヒントを紹介します。
前回は「不況時の企業戦略は間違いだらけ」と題して、この状況下で企業がいま、どうなっているのかを検討してきました。今回は第2回として、皆さんが陥りやすい発想のワナ、それによって引き起こされる深刻な問題について考えていきたいと思います。
昨年末から今年初にかけてのパニック的な需要縮小(外需消滅、投資見合わせ、在庫調整)が一息つき、回復基調が鮮明になっています。しかし、それでも今年度の製造業の需要はピーク時の8割程度での縮小均衡が見込まれています。
前回もお話ししたように、このような状況の中、企業はパニックに対処するために
行った大幅経費カットと非正規雇用の急激な調整の悪影響から抜け出せずに苦しんで
います。
しかしいま、真に企業に求められていることは、「縮小均衡でコストを減らすことよりも、売り上げを増やすことによる利益の増大」であることは明らかです。利益増大を実現するためにはこれまでとは違った考え方で行動しなければならないのです。
パナソニックの創立者である故松下幸之助氏が「不況もまたよし」という名言を残しています。「好景気もよろしいが、不景気はさらにいい」のだそうです(注)。
注:『不況もまた良し』(津本 陽/幻冬舎/2003年/ISBN:978-4344403338)
不況だからこそ、知恵を絞り、思いをめぐらせ、それを具現化する方法を模索し、好景気のときには「景気は循環するもの」と知り、常に不況に備えなさいと教えているのです。
確かにそうだと頭では分かっていても、実践するのは容易なことではありません。しかし、現実には不況でもちゃんと収益を上げている企業もたくさんあります。筆者が支援している企業でも業績を向上させている企業は少なくありません。そういった企業と不況に沈んだ企業はどこが違うのでしょうか。
松下幸之助氏に限らず、多くの識者や著名な経営者が「不況はチャンスだ」と説いています。しかし、多くの企業の行動を見ていると、わざと利益から遠ざかっているとしか思えないような特徴的な行動パターンがあります。
例えば、
などなど、要するにパニックに対処した「ケチケチ作戦」をさらに強化して何とか市場が回復するまで持ちこたえようというわけなのです。しかし、これらの作戦がかえって逆効果になることもあるのです。
どうして逆効果になってしまうのか分かりますか? それぞれの指標の間にはトレードオフの関係が存在し、個別の事情を無視した一律対策は、思わぬところで副作用が発生し利益をむしばむのです。
会社はそれぞれが自分の持ち場で勝手に動いて利益が出るようにはできていません。前回も指摘したように「売り上げ」「原価」「経費」と分断された指標を単独で追いかけてはいけないのです。
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