見積もられた各タスクの期間から、今度はプロジェクト全体の期間を見積もっていきます。この作業は、ガントチャート作成・リソース山崩し・クリティカル・チェーンの決定という3つのステップで行います。
まずタスク・リソース・期間が明記されたネットワーク工程表を基に、時間軸で記載したガントチャートを作成します(図3)。ガントチャートを作成すると、スケジュールに余裕があって任意の開始日を選択できるタスクがあることが分かりますが、まずはできるだけ遅いタイミングでスケジュールしておきます。
次にリソースの山崩しを行います。ガントチャートを作成すると、同じリソースが同じ時期にタスクを行わなければならないというダブりが発生します。このとき、全体期間に影響の少ない方のタスクを前倒しして調整を行います。
最後にクリティカル・チェーンを決定します。クリティカル・チェーンとは、山崩しを実施した後のネットワーク工程表で、プロジェクトの開始から終了をつなぐ経路のうち最も時間のかかる経路を指します。これは第2回「PDCAサイクルに潜むプロジェクト管理の問題点」で説明したクリティカル・パスと基本的に同じものです。しかしクリティカル・パスは従来リソースの競合を考慮していないので、名前を区別しています。クリティカル・チェーン上の各タスクの合計を計算することで、理想的に進んだ場合のプロジェクト期間を算出できます。
ここで見積もった期間は、プロジェクトが理想的に進行した場合であり、現実にはさまざまなことが起こります。そこで制約条件(ボトルネック)である納期を守るためのバッファを計画します。これをプロジェクトバッファと呼びます。バッファの長さは組織的に決められた基準が理想ですが、当初はクリティカル・チェーンの長さの半分を基準値として計画されるのが一般的です。これをプロジェクト納期の直前に挿入し、プロジェクトバッファ分だけ計画全体を前に倒して、プロジェクトのスタート時期を決定します。
CCPMではプロジェクト管理を容易にするために、さらに合流バッファと呼ばれるもう1つのバッファを設けます。説明したようにクリティカル・パスはプロジェクトの状況によりたびたび変化します。そこで非クリティカル・チェーンからクリティカル・チェーンに合流するポイントにバッファを挿入することで、プロジェクト進ちょく中にクリティカル・チェーンが変わることを避け、変化に対応できる頑強なスケジュールを作るのです(図4)。
以上で、クリティカル・チェーンに基づいたプロジェクト計画(P)が出来上がったはずです。各タスク期間(50%確率)の合計は従来の80%見積もりの場合の半分程度です。この長さの半分のバッファを置けば、トータルで見ると従来の見積もり期間と比べて約4分の1の期間が短縮された計画ができたことになります。
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次回はPDCAサイクルのD(実行場面)とC(確認場面)について検討していきましょう。
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