プロジェクト管理の成否はバッファ設計で決まるTOC流の開発型プロジェクト管理術「CCPM」(4)(2/3 ページ)

» 2009年02月04日 00時00分 公開
[村上悟, 西原隆/ゴール・システム・コンサルティング,@IT MONOist]

プロジェクトをいかに進めるか

 従来型プロジェクト管理は、できるだけ詳細な計画を立てるよう推奨しています(第1回「なぜプロジェクトの進行計画はいつも壊れるの?」参照)。しかしこのやり方では、不確実な事態が多発するという開発の現実を考えるとムリがあることも説明したとおりです。優秀なプロジェクトマネージャは、CCPMという方法を知らなくとも、不確実な事態に備えるために計画段階で十分な予備日を確保していました。それでも余裕がなくなれば、関係者をまとめ上げて残業や休出、開発者の増員、仕様変更といった対策を講じて納期を守るといったことを経験的に実施していたのです。

 しかしこれまで指摘したとおり、開発規模が大きくなるにつれ経験に頼ったやり方には限界が出てきます。いい換えればTOCのプロジェクトマネジメントであるCCPMは、この優秀なプロジェクトマネージャのやり方を、バッファマネジメントという仕組みを構築することにより組織として展開する方法と考えることもできます。

 このバッファマネジメントを中心としたPDCAサイクルを構築することにより、いままで経験的に行われていたやり方を組織のルールとして確立でき、人に頼ったさまざまな対策を組織的に実施できるようになるのです(図1)。

Plan プロジェクトに必要なバッファサイズを組織的なルールに基づき計画する

Do トラブルなどの不確実性の発生状況をモニターしながらバッファへの影響を把握する

Check バッファサイズが許容量を超えていないか確認する

Action バッファサイズが許容量を超えた場合、バッファ回復策を組織的に実施する

図1 CCPMのプロジェクトマネジメント像 図1 CCPMのプロジェクトマネジメント像

バッファを計画する方法

 では、具体的にバッファマネジメントの実践方法を見ていきましょう。最初はバッファの長さを計画する方法です。

 バッファを計画するとは、分からないことの発生がどの程度あるか見積もることです。しかし、分からないことは分からないのですから、これを正確に見積もるなどということはできません。考え方を変えて分からないことがどのぐらいまで発生してもよいかを決めることにしましょう。重要なのは組織的な基準を持つことです。

 バッファとは、小さ過ぎれば納期を守れず収入を減少させてしまう、大き過ぎればプロジェクト期間が長くなり投資を増加させてしまうという、企業の財務に直接影響を与える問題です。従ってバッファとはプロジェクトリーダーが勝手に決めるものではないのです。またバッファサイズを適正値にしていくためには、プロジェクト実施の結果を振り返って学習していくことが必要です。リーダーが個人的に経験し学習するより、多くのプロジェクトで組織的に学習していくやり方が良いのはいうまでもありません。

 バッファサイズはプロジェクトの期間に対して、組織的に決めたサイズを乗じて決定します。このためプロジェクト全体期間の見積もりを行う必要があります。ステップを細かく見ていきましょう。

  • ネットワーク工程表を作成する
  • プロジェクト全体期間を見積もる
  • バッファサイズを見積もる

1. ネットワーク工程表作成

 ODScで決定した成果物を完成させるための作業内容とその順番を、図2のようなネットワーク工程表として作成します。ネットワーク工程表は、タスク間の依存関係、リソースの確認、タスクごとの時間見積もりのステップを踏んで作成していきます。

図2 ネットワーク工程表 図2 ネットワーク工程表

 まずタスクとその依存関係を設定します。タスクの粗さは、1つのタスクが2日から14日程度の中日程と呼ばれるレベルで洗い出します。洗い出すときのコツはプロジェクトのゴールからスタートし、その直前に実施しなければならないタスクは何か、さらにその直前に実施しなければならないタスクは何か、といった具合に完成からさかのぼるバックワード方式でタスク洗い出すことです。

 次にネットワーク工程表の各タスクにリソースを割り当てていきます。リソースとはタスクを実行する人や設備のことです。各タスクにリソースを割り当てるとともに、その人数など数量も記載していきます。リソースの名称はほかのプロジェクトとの関係がありますので、組織的に統一した名称を利用すると便利です。

 3つ目の仕事はタスクごとに期間を見積もることです。ここでのポイントは、各タスクに安全余裕を入れず、できるかできないか50%確率の時間見積もりを実施することです。説明したように、これまでの時間見積もりは、ほぼできる(80%確率)期間で見積もりをしますが、バッファマネジメントでは安全余裕を明示的にバッファに集めますから、各タスクには安全余裕を含まないようにします。

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