前回行った競合分析をもう1度やってみよう。普段何気なく使っているボールペンにも、さまざまな戦略が隠されているのだ。
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
皆さん、第6回の「競合商品を設計分析で駆逐しようぜぃ!」は、いかがでしたか?
設計とは、3次元モデラーによる単純なモノの造形ではなく、「守り」や「攻め」があることを理解できましたか?
また、「何でもあり!」の商品では戦えないことも、うっすらとでも理解できたかと思います。特に、トレードオフを施したときは、設計フローを逆戻りする必要があるのです。つまり、「6W2H」や「使用目的の明確化」や商品企画まで戻り、トレードオフが「道を外すことなく成立すること」の検証が必要です。成立しないときは、商品企画からのやり直しです。
この行為を設計書なくして、どのように戦略を立てるか? まさかアドリブや多数決で済ませるわけにはいきませんよね!?
それでは、恒例の「理解度チェック」です。3項目以上理解していた方は先へ進みましょう。そうでない方は、第6回を読み直してみてください。
理解度チェック
- 良君の会社の「ナイナイ一覧」に共感してしまった
- 競合機分析をやらないのは技術者としておかしい
- 真っ向から挑戦する同思想戦略を理解した
- トータルコストデザインの概念は、目からウロコであった
- 設計思想の優先順位を変えるトレードオフ戦略を理解した
さぁてと、今回は『競合商品を設計分析で駆逐しようぜぃ!』の第2弾ってことで、お題は『加圧式ボールペン』でいこうじゃねぇかい。さあて、設計の楽しさを味わおうってもんよっ!
まずは、第6回の復習も兼ねて競合機分析の理解をさらに深めていきましょう。
商品の性格は、「なんでもあり」の商品でない限り、「設計思想とその優先順位」の第1位から第3位で決定付けられます。特に、第1位の支配力が大きくなります。
同思想戦略とは、この「設計思想とその優先順位」の第1位から第3位まで、特に第1位を競合と同じに設定して挑戦する商品戦略です。そのほとんどが、さらなる低コスト化で挑みます。業界のオンリーワンやナンバーワンを獲得することは長い年月や莫大(ばくだい)な開発予算が必要です。それに挑むことは、一般的な中小企業や零細企業にとってなかなか厳しいものがあります。しかし企業規模が小さいこと(小回りが利くこと)を生かして、コストでならどうにか挑戦することは可能です。
市場でのオンリーワン商品やナンバーワン商品の「設計思想とその優先順位」をあえて避け、その優先順位を入れ替える、または新規に設定する商品戦略のことを「トレードオフ戦略」といいます。
トレードオフ戦略は、市場での実績が少ないため、マーケティングリサーチ(=市場調査)からやり直す場合があります。多くのトレードオフ戦略は、多機能化へ進む場合があり、顧客からは「何でもあり」の商品と受け取られる場合も少なくありません。そうならないためにも設計書が必要になってくるのです。
復習も終わったから、そろそろ『競合商品を設計分析で駆逐しようぜぃ!』の『加圧式ボ−ルペンバージョン』に入ろうじゃねぇかい! まさか、ICレコーダを持っていやがるんじゃねぇだろうな?
甚さん! もう、その件は忘れてくださいよ(第5回参照)。すぐにポイントだけをメモしますってば。いいから早く始めましょうよ。
ところでオメェ、年末年始の休みの間、何してた? まさか、商社のオネエちゃんと合コンざんまいじゃあるめぇ。エリカちゃんは大田区の外部講習会で勉強しているってメールが来たぞ。
ギクリッ。ド、どうして知ってるの……。
べらんめぇ! オメェは、有名大学の富士山麓大学の院卒だろうが? 少しはプライドを持ていっ。
ぷっ、 プライドッ? そりゃあ、僕にだってありますよ。これでも、やることはちゃんとやってるんですっ。『図面ってどない描くねん』は、しっかりとマスターしましたし、いまは、『ついてきなぁ! 加工知識と設計見積り力で「即戦力」』で勉強していますよ。
なんだ! 感心なヤツじゃねぇかい! 設計者は『日々是決戦』だ! 設計者として自信が持てたら、合コンに行け。……ついでにオレサマも行ってやらぁ。
ハイハイ! 早速、教えてください。お願いします。
今回は灯油ポンプから加圧式ボ−ルペンに課題(ターゲット)を変えて、競合商品を設計分析で駆逐してみましょう!
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