第4回「加圧式ボールペンを設計分析しようじゃねぇかい!」でも登場した「三菱鉛筆 Uni POWER TANK(以下、 POWER TANK)で説明しましょう。
リフィル内に封入した3000hPaの圧縮ガスでインクを押し出すことによって優れた筆記性能を実現した加圧式ボールペンです。
200円でこれだけのパフォーマンスを有していることに、おいらは何度も感激しちまうよ。素晴らしいじゃねぇかい!
甚さん、僕も買いましたよ。甚さんのマネをして、風呂場においてあります。入浴中、特許ネタが出たらメモしています。湿気どころか、湯の中に落としても大丈夫でした。
以前と比べりゃ、ずいぶんと感心なヤツになったじゃねぇかい! さすがに、富士山麓大の院卒だぁ。
まったくー。おやじさんは院卒のことをけなしなり、褒めたり……。どっちなんだい。
さて、この優れモノをターゲットにした同思想戦略を考えてみましょう。
上記の POWER TANK(図3)に同思想戦略で挑戦するのは「加圧式ボ−ルペン エアープレス」(トンボ鉛筆製)です(図4)。
ボ−ルペンの芯(しん)を出すノックの動作を利用して、リフィル内を加圧するようにしています。さて、これを分解してみましょう!(図5、6)
なるほど、よくできているな。僕でも設計できるかなぁ?
確かによくできていますね。ここで、「設計思想とその優先順位」を分析してみましょう。
「設計思想とその優先順位」の第1位から第3位のすべてがピタリと同じではありませんが、商品の性格を決定付ける第1位が同じであることは、同思想戦略と見なすことができます。
どうだ! おもしろい商品が生まれただろう? ノックすることでポンプ作用を機能させ、リフィル内の圧力を高める。特に説明はしねぇがよ、軸長を短くして機動性も主張していらぁ。
なるほど、魅力ですね。でも、ちょっと価格が高くないですかね?
まあ、それはいうな。今回は、オメェのための学習教材と考えてくれ。
ガッテン承知! さあさあ、次はトレードオフ戦略ですね! 次行ってみよーう。
テンメェ、いい加減にしろっ! まだだよっ! もっと深く考えろってぇの! ここに書くから、オメェが思いついた項目で同じものがあったら印を付けろ。
甚さん、正直にいいます。僕が思いついた項目は、ゼロです。ウ、ウフフフ……。
ぜっ……ゼロかいっ! ゼロはコーラと発泡酒で十分でいっ! 誰が脳ミソまでダイエットしろっていった! 再び、3次元モデラーに戻りやがったな!! フンガーッ!
そして、今回もまた(名物の!)甚さんの鉄拳制裁が下りました。またしても良君は「3次元モデラー」認定を受けてしまいました。
イタタァ! もー甚さんっ、お願いだから頭をポンポン殴るのはやめてくださいって。おっしゃるとおり頭がダイエット中なんですから……。どうせ僕なんか……フンフンフン。
テンメェ! いじけてる場合じゃねぇぞ。いいからよく聞け。 図4から図7までをよおーく見て、このボ−ルペンの『使用目的の明確化』を推定してみやがれっ!
ええっ、えっと。なぜ軸長が短いかっていうと、屋外で使うからですね。例えば、以下の人たちが『WHOM(誰のため)』だと思いますっ。
この人たちは、胸や腕のポケットにボ−ルペンをササッと素早く挟み込みます。彼らはオフィスにいる事務職より動きが激しく、ボールペンを落としやすいのです。よってボールペンの軸長を短くし、安定したグリップ力を得るために極太のワイヤーで設計しています。
これを「設計思想とその優先順位」の第2位に設定しているのです。
フンッ。やりゃーできるじゃねぇかい。逆戻りたぁ、チトいい過ぎたか。安心したぜぃ。3次元モデラーの多くは、外観のモデリングテクニックにこだわりすぎる。だから『設計』ではなく『造形屋』なのだ! 分かったら、次はトレードオフ戦略にへえるぞ!
バチコーイ!
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