「本陣殺人事件」(横溝 正史・著)というミステリーがあった。ツララ状の氷が殺人の凶器となるが、警察が来るころには溶けてしまうのである。
それと同じように、作業した後、溶けてしまう「賢い砂」がある。世の中には「サンドブラスト」という装置がある。圧力を掛けた空気や油と一緒に、酸化シリコンの砂を加工物に吹き付けて、表面の付着物を除去したり、表面に残留圧縮応力を付与する。ところが、図3のようにヤカンの内面のような手の届かないところを、サンドブラストするのは大変である。加工後に流れずにたまった砂を除去しないとならないが、手が入らず、とにかく洗浄しにくい。さてどうしたらよいか。
答えは?(*赤字のテキストをクリックすると答えを表示します)
薄い板を接着剤で治具に固定して、表面を研削しているが、加工後に有機溶剤で接着剤を溶かすとクサいし、頭が痛くなるし、環境に悪い。さてどうしたらよいか。
答えは?(*赤字のテキストをクリックすると答えを表示します)
水蒸気は空気の温度を下げると、水滴が析出(*異相の物質が分離すること)する。上述の砂糖を入れた紅茶が冷めたのと同じである。でも、その水滴はどこに析出するのだろうか。
冬の寒い日、お風呂に入っていると、風呂場中に、水蒸気飽和空気の湯気で覆われる。図4のように、冷たい壁や天井にも膜状に水が付着しているが、窓ガラスには大きな水滴が付いている。窓ガラスの向こうの外気が冷たいからである。雨の日の自動車のフロントガラスも同じである。飽和していないエアコンの空気を吹き付ければ、曇りが消えていく。後ろのガラスは電気抵抗線で温めて、空気の中に蒸発させる。
筆者の大学の地下2階の工作室の壁は、夏の間、いつも汗をかいていた。その壁は地面との土留めの側面で、夏でも冷たい。
クーラーを入れて空気の温度を低くすると、まるでハエ取り紙のように水滴を集める。だから、壁に断熱ウールを張り付けた。表面は温かくなって、汗は消えた。でも次は工作機械が汗をかくようになり、生暖かい海風のときは機械がさびた。それならば、壁が犠牲吸着板になってくれた方がまだマシであった。
チタンは真空の中で水蒸気のようなガスを吸着する。ハエ取り紙ではなく、“ゲッター”と呼ぶ。全面に吸着したら、後で温度を上げてガスを放出させる。そうすると吸着板として再び使用できる。(次回に続く)
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