電子回路を理解するには「回路構成とその動作を思い描けること」が大切。過去問題を復習して次週の【期末考査】に望んでください
【問題20】のようなオペアンプを用いた増幅回路において、入力信号が何倍に増幅されるか? 電圧増幅率AVを求めなさい、という問題でした。
皆さん解けましたか?
解けた方も解けなかった方も答え合わせをして、次項の解説までぜひ読んでみてください。毎週コツコツ問題を解いて、電気・電子回路の基礎知識を身に付けてください。
それでは、解答を発表します!
オペアンプによる増幅回路の働きは「電圧増幅率が∞のオペアンプに負帰還を掛けて、回路の電圧増幅率を制御する」ことがポイントです。
それでは、【問題20】のオペアンプ回路の動作を検証してみましょう。
図1は【問題20】のオペアンプ増幅回路を描き直したものです。
ここで、入力電圧viを加えるとそれが非反転入力に伝わり、出力電圧voは、
に増幅されます。
すると、その電圧変化が抵抗R1とR2によって反転入力に伝わり、今度は電圧変化を打ち消す方向にオペアンプが働きます。これが“負帰還”です。
結果、「オペアンプは入力電圧viとS点の電位が等しくなるように働く」のです。このように、オペアンプの反転入力・非反転入力の電位が等しくなる現象を“イマジナリショート(仮想短絡)”といいます。
ここまで理解できれば、電圧増幅率AVは簡単に求められます。
【問題20】のオペアンプ増幅回路の電圧増幅率AVは、
となり、「3倍」と求められます。
オペアンプの非反転増幅回路の応用として、図2のような「ボルテージフォロワ」があります。ボルテージフォロワは電圧の大きさは変わりませんが、大きい電流出力に耐えられるように増幅することができます。
今回解説した【問題20】を1学期の区切りとして、次回は【期末考査】をお届けします。電子回路の理解の一助となることを期待しています。ぜひチャレンジしてください。
1学期の後半【問題10】から【問題20】では、トランジスタやダイオードなどの半導体素子を使った電子回路の機能と動作について紹介してきました。現在の電子機器では、これらの半導体素子やその電子回路を1つのチップに集積したICやLSIが主体となっています。しかし、その機能の基はトランジスタの“スイッチ作用”や“増幅作用”にあります。トランジスタの学習は、今日でも電子技術取得の登竜門に違いありません! 電子回路を理解するには、何より「回路構成とその動作を思い描けること」が大切だと思います。これまで、それを意識して出題・解説してきました。初心者には難しい内容もあったと思いますがくじけずに読解してください。
ちなみに、2学期のスタートは2008年1月を予定しています。2学期では、0(Low)と1(High)の組み合わせで情報を処理する回路、すなわちデジタル回路について出題します。今後の宿題にも期待してください。「継続は力なり」です! (次回に続く)
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