BMWのようなプロダクトDNAを獲得するために先進企業が目指すグローバル成長期のPLM(3)(1/2 ページ)

日本にPLMを紹介する先駆けとなった書籍「CRM、SCMに続く新経営手法 PLM入門」(2003年刊)を執筆したアビーム コンサルティングの執筆チームが、その後のPLMを取り巻く環境変化と今後のあるべき姿について、最新事例に基づいた解説を行う。

» 2007年11月06日 00時00分 公開
[大須賀賢二/アビーム コンサルティング,@IT MONOist]

 これまで紹介してきた2回の記事では、PLM(Product Lifecycle Management:プロダクトライフサイクル・マネジメント/製品ライフサイクル管理)全般の課題、および日本企業における開発・製造の現場が競争力を復活させるためのヒントを光ディスク業界の事例を基に解説した。今回は、PLMにおける今後の研究課題として、製品ライフサイクルにおけるプロダクトDNA継承課題について話を進めたい。

賢い消費者と、“らしさ”が見えない製品群のジレンマ

 デジタル化に伴う事業構造の変化と、日本企業が急速に競争力をなくしている現状については、第2回で解説をしているが、製品の視点で、モノづくりの現場の状況を俯瞰(ふかん)してみると、日本企業が抱える本来的な課題が浮き彫りになる。

 そもそも、卵が先か鶏が先かの議論ではあるが、デジタル化、モジュール化が進展した結果、市場への参入は容易になり、新興メーカー、既存メーカーが争って新製品を上市(編集部注:put on the marketの訳語といわれている。市場投入するという意味)している現在、企業の売上の約70%は新製品で作られる状況といわれている。新製品を出せない企業は市場から締め出される可能性すらある。

 企業や業界により新製品と呼ぶ期間の定義に違いはあるが、一般的に家電製品では発売後3カ月から半年、自動車では1年から2年と短くなった。その結果、製品のアイテム数は増え、ライフサイクルは短くなり、ロットサイズも小さくなった。ゆき過ぎた多品種少量生産は、製品アイテム数をできる限り削減するか、新製品を効率よく上市させない限り利益は出ない。

 一方、消費の場面を俯瞰すると、リピートオーダーが減少し、指名購入が減ってきている。新製品の上市が速くなり、消費者が購入時期を判断することが難しくなっている。また、デジタル化で製品の性能が均一化し、消費者にはどれも同じ製品に見えてしまう。

 消費者の多くは、新製品と旧製品に対して性能の差がないことに気付いている。最近ではブランドや製品に対して、明確な理由を持たないで離反するケースが目立つようにもなった。企業は、製品に対する消費者のロイヤルティー低下という新たな課題も同時に解決しなければならない状況に置かれている。

 この状況下で勝ち残るためには、顧客視点で製品ライフサイクル全般情報の一元管理を行い、「らしさの見える製品づくりの仕組み」を早急に整備し、製品に対する顧客ロイヤルティーを回復する必要がある。

らしさの見える製品づくりの仕組みとは?

 では、らしさの見えるとは製品づくりとは、どのようなものか。自動車業界を例に説明すると、メルセデスやBMWなどは、年式やグレードが異なっていても製品を見ただけで消費者は違いを認識できるが、日本の自動車の場合はどうだろうか?

 現在、日本では約160車種のブランドが市場で販売されているが、消費者がその違いを明確に認識できる自動車は何台あるだろうか。ましてや、同じブランド(車種)で年式を超えて「らしさが見える自動車」は何台あるだろうか。メーカーエンブレムやブランドを隠したブラインドテストを行うと、よほどの車愛好者でない限り、正しく答えられない状況である。いい換えれば、消費者が“らしさ”を実感する製品づくりができていないのである。

 数年前、筆者が担当した家電メーカーの製品戦略プロジェクトにおいても、一般消費者へのグループインタビューの際にブラインドテストを実施したが、製品とブランドの正解率は10%台であり、モノづくりの難しさを実感した。従来行われてきたDR(Design Review:デザインレビュー)や開発ゲートだけではなく、開発体制、開発の意思決定基準など、製品開発の在り方を見直すきっかけになった。

 近年、日本企業でも製品ライフサイクル全般(マーケティングからEndまでのすべてのプロセス)を統括する担当者や部門を置く会社や、特定の顧客向けにカスタマーチームを編成しプロジェクト型で製品を開発する会社が出てきているが、そもそも日本の製造業には、製品を企画から上市、Life Endまで統括管理する部署が存在しない。では、PLM導入に合わせ、「消費者がらしさを実感する」をどのように把握し、製品づくりの仕組みに反映すればよいのか?

世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」

 世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。



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