さて、皆さんは「さぁ、これから新しい製品の設計を始めるぞ!」というとき、いきなりCADの前に座って、線を描いていませんか? つい、結果を早く求めたくなるあまりに、1本でも線を書き始めて設計作業を早く終わらせて「楽になりたい!」という心理が働きます。この焦る気持ちをグッと抑えて、あるべき設計作業を分解してみましょう。
図2に示すように、設計作業の最も重要な決まり事は、設計INPUTという企画情報入力に対して、設計OUTPUTという設計者の成果(生産図面など)を出力することです。
この設計業務の中で構想設計の受け持つ使命は、設計者が頭の中でぼんやりとイメージするものを「どういうレイアウトで」「どんな部品を構成して」具現化するのかを紙に描いて表現させることなのです。
この最初の段階を回避していきなりCADを利用してしまうと、設計者の性格上、どうしても詳細形状を完成させたくなってしまいます。これでは本来の構想設計とはいえず、構想をおろそかにした詳細設計がスタートしてしまい、製品のコンセプトがあいまいになります。「コストターゲットに収まるのか?」「要求品質を満足するのか?」手探り状態で設計しなければいけません。
さらに悪いことに、設計者はCADを操作していると「設計している」という錯覚に陥り、自分の世界に閉じこもってしまいがちです。
そろそろCADの中に部品の形状が出来上がったころに、上司や関連部門からデザインレビューを受け、大幅な構造変更を指示されることもよくあることです。つまり、設計作業の中で、構想設計が良質な遺伝子を持った設計OUTPUTを出すために重要な作業である、という認識を持つことが重要です。
初めに構想設計として行う作業は、ポンチ絵を描くことです。徐々にイメージを膨らませ、アイデアの選択を行います。
キーワード:ポンチ絵 ポンチ(ポンチ絵)とは、イギリスの雑誌「Punch,or The London Charivari」(1841年刊行)の日本語版「Japan Punch」が語源になったもので、マンガ・滑稽(こっけい)画のことをいいます。 |
構想設計で重要なポンチ絵ですが、最近の若い技術者はポンチ絵を描けない人が多いことに驚かされます。日常業務では3次元CADを使用して設計しているにもかかわらず、3次元の立体モデルがイメージできないのです。
ということは、3次元CADでモデリングされる部品は、頭の中でイメージした部品を表現しているのではなく、成り行きの形状をモデリングしただけの結果です。つまり、成り行きでできたモデルを見て理解した後に、細かい部分の体裁を整える設計をしているのです。これでは、本来のあるべき設計とは呼べません。
構想設計を行ううえで、立体イメージをポンチ絵にしてスラスラと描けるようにするためには図解力が必要です。図解力とは、「目に見える形で物事を図として表現する能力」です。
設計に必要な図解力には、次の2つがあります。
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