見たいところをじっくり見るLiDAR、濃霧や煙の向こうも検知可能:車載半導体
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とSteraVisionは2022年2月21日、可動部のないソリッドステートLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を開発したと発表した。SteraVisionは2022年7月ごろからサンプル出荷を開始する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とSteraVisionは2022年2月21日、可動部のないソリッドステートLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を開発したと発表した。SteraVisionは2022年7月ごろからサンプル出荷を開始する。
車載向けで、量産性を向上させている。肉眼では確認が難しい遠方や、濃霧、煙の向こうにある物体も検知できるようにした。さらに、カメラとLiDARを併用する認識技術によって「見たいところを必要なだけ見る」といった人間の視覚のようなシステムも実現する。
NEDOでは2019年12月から、長距離、広視野角、高解像度を実現する車載用LiDARの開発に取り組んできた。今回開発したのは、可動するスキャナーをなくして液晶を用いる方式だ。可動部をなくすことで、金属疲労などの信頼性の問題や、外部の振動による不安定性を解決するという。
開発品は光の偏光方向を高速でスイッチし、光ビームスキャンすることで物体を検知する。ソリッドステート光ビームステアリング素子「MultiPol」によって、多ビーム同時走査となるマルチスキャン化し、2波長のビート信号を用いたデュアルビート方式による長距離高精度測距を実現した。光ビームをアナログに走査する方式とは異なり、光ビームをランダムに切り替えて自動運転システムなどに必要で重要なシーンを選択してピックアップすることが可能だとしている。従来の走査方式では全てのシーンを計測した後にフレームをリフレッシュする必要があったが、選択的に抽出した重要なシーンを計測した後でフレームをリフレッシュできるため、高速での追跡を実現した。
また、光パルスを物体に照射し、戻ってきた光の粒を検出して時間差を出すToF(Time of Flight)方式ではなく、光の波の性質を利用したFMCW(Frequency Modulation Continuous Wave)方式を採用した。これにより、濃霧や煙などの先の物体検出と、速度の直接検出を実現した。FMCW方式で課題となっていた小型化と高性能化を実現するため、光方向性結合器やY分岐器など光部品をフォトニックICに1チップ化した。これにより、同時に多くの光ビームをスキャンしながら小型化やコスト低減も達成する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- システムが担う運転の「認知」「判断」「操作」、深化と普及が進む
レベル3の自動運転システムが世界で初めて製品化され、ハンズオフ機能が広がり始めた2021年に対し、2022年以降は、高度なADASやレベル3の自動運転の普及と競争が一層進みそうです。 - サーキットで自動運転車レース、優勝チームは最高時速278kmを達成
消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2022」の会期にあわせて米国ネバダ州のラスベガス・モーター・スピードウェイで開催された自動運転車のレース「The Indy Autonomous Challenge」において、ミラノ工科大学とアラバマ大学で構成されたチーム「PoliMOVE」が優勝した。 - ソニーが2台目のEVを披露、レベル2の自動運転や5Gによる遠隔操作も開発中
ソニーは2022年1月5日、消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2022」において、同年春に事業会社「ソニーモビリティ」を設立すると発表した。 - ソニーが車載LiDAR向けSPADセンサーを商品化、距離300mの検知精度は15cm
ソニーセミコンダクタソリューションズが車載LiDAR向けの積層型直接ToF(dToF)方式のSPAD距離センサー「IMX459」を商品化。10μm角の微細なSPAD画素と測距処理回路を1チップ化し、1/2.9型と小型ながら高精度かつ高速な測距を実現した。また、車載LiDAR向けのSPAD画素を用いた積層型距離センサーを商品化したのは「業界初」(同社)だという。 - 小糸製作所が1億ドル投資するLiDARベンチャー、ADAS向け特化で大規模受注獲得
セプトン・テクノロジーが2016年5月の設立から注力してきたADAS向けLiDAR事業の成果や戦略について説明。米国大手自動車メーカーが2023年から市場投入する新型車向けの大規模受注が決まっており、小糸製作所から合計1億米ドルに上る出資を受けるなど、今後も拡大するADAS向けを中心としたLiDAR市場での展開を拡大していく方針だ。 - フォトニック結晶レーザーでLiDARを3分の1に小型化、京大と北陽電機が開発
京都大学工学研究科 教授の野田進氏らの研究グループと北陽電機は、「Society 5.0科学博」において、共同開発したクラス最少のLiDARを披露した。フォトニック結晶レーザーの搭載でビーム整形のためのレンズが不要になるため、大幅な小型化を実現しており、AGV(自動搬送機)や農業機械、自動運転車など向けに事業化を進めたい考えだ。