これから製造業のコト売りはどう進化していくのか:サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(12)(2/3 ページ)
サブスクリプションに代表される、ソフトウェアビジネスによる収益化を製造業で実現するためのノウハウを紹介する本連載。最終回となる第12回は、海外などの動向や示唆を基に、これからの製造業のソフトウェアビジネスについて、どのような方向へ進化していくべきなのかを考える。
これからはB2BとB2Cの垣根がなくなる時代
新しいビジネスモデルのユースケースの可視化や、カスタマーエクスペリエンスの強化について議論している際に「これはコンシューマー向けのビジネスか?」と聞かれることがまれにある。
カスタマーポータルでオンデマンドにライセンスを入手したり、契約を更新させたり、自動化してソフトウェアを即時納品するような、“人手を介さない手続き”を行うことについて、どうしてもコンシューマー向けのサービスだと考えてしまうようだ。
ソフトウェアのサービスビジネスは、従来の製造業のビジネスプロセスや考え方が全く異なってくる。今まで自分たちがやってきたことと懸け離れているために、製造業の担当者が落とし込むには具体的なイメージがしづらいところだろう。
既にB2Cで実現している要素と、これからB2Bで求められる要素に違いはなくなってきている。企業ユーザーであっても、必要なものを、必要になったときに、必要なだけ、製品やライセンスを入手できたり、機能をすぐに有効化できたり、契約を更新できることが求められている。
しかし、実際の製造業のビジネスは、営業担当者が顧客のところまで出向いて、消耗品のオーダーを受けて紙の注文書に社印を押してもらい、ソフトウェアは光ディスクなどの物理的な形で納品を行うものだ、という固定観念はいまだに根強い。ハードウェアとその消耗品を売るビジネスを長年続けていた企業にとって、サービスを売るという考えは発想の根本を揺るがすほど異質に見えるようだ。何と言ってもモノありきで、いつまでたってもモノが中心なのだ。
優れた生産システムを構築している製造業が、なぜかソフトウェアやサービスビジネスについてはそういった発想が極めて乏しい。もしかすると、ソフトウェアやサービスに対する固定化された認識がそうさせているのかもしれない。
目指すべきはスマートフォンのようなビジネスモデル
製造業のソフトウェアに求められる要素を突き詰めていくと、スマートフォンのようなビジネスモデルが理想形としてたどり着く。ハードウェアをプラットフォームとして、必要なソフトウェアを、部品を組み立てるように構成して、ユーザーにとって最適なソリューションを柔軟に構築できる。
ポータルサイトを通してソフトウェアやサービスの契約情報が参照できて、いつでもどこでも必要な情報やリソースが入手できる。契約の更新も時間を問わず、必要なタイミングで行えるようになれば、営業担当者が会社に出社するのを待つ必要はない。納期間近で徹夜続きの夜にでも、大きく時差がある海外からでも、営業担当者の対応を待つ必要はない。必要なタイミングで、必要な機能やソフトウェアが入手できてすぐにでも利用できて、プランや契約数の変更も、状況に応じてポータルサイトから行える。
B2BとB2Cの垣根がなくなり、スマートフォンの世界では当たり前な世界が、製造業のソフトウェアの世界でもいずれスタンダードとなっていくだろう。
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