これから製造業のコト売りはどう進化していくのか:サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(12)(3/3 ページ)
サブスクリプションに代表される、ソフトウェアビジネスによる収益化を製造業で実現するためのノウハウを紹介する本連載。最終回となる第12回は、海外などの動向や示唆を基に、これからの製造業のソフトウェアビジネスについて、どのような方向へ進化していくべきなのかを考える。
企業の意識改革と、データに基づいた製品づくり
ハードウェアもソフトウェアも、サブスクリプションを中心とした課金モデルをベースにサービス化が進み“顧客が望む形に応じた製品づくり”がさらに加速していく。
そう投げかけると「そんなことは既にやっている」という現場担当者の声も聞こえてくるが、果たして真の意味での顧客が望む製品づくりが行われているのだろうか? 考えることを放棄して“顧客の言う通りに作っている”だけではないだろうか?
実は、顧客自身も何が問題なのか本質を完全に把握し切れていないことがほとんどだ。そのため、現場の担当者は“実態は、本当に顧客が抱える問題を解決する製品を提供できているとはいえない”と、うすうす気付いているのが実情ではないか。
売り切り型とサブスクリプション型のビジネスモデルでは、それぞれ製品開発のプロセスや考え方も異なる。売り切り型の場合は、その製品が出来上がってしまえば開発チームは解散してしまい、作って終わりだ。しかし、サブスクリプション型の場合、製品はサービスであり、製品を提供することが目的ではなく、顧客を満足させ続けることが目的になる。開発に終わりが訪れることはなく、顧客が気付いていないような潜在的な問題を解決し、常に顧客に向き合いながら顧客満足度を追求する。それが顧客中心の製品づくりだ。
今後は顧客中心の製品づくりが浸透していくにつれ、データに基づいて顧客の動向を分析しながらの製品づくりが進められるようになる。市場とメーカーとのミスマッチがおきにくくなり、顧客が望む製品を必要なタイミングでリリースできるメーカーが、市場でリーダーシップを発揮できるようになるだろう。
今日まで約2年間にわたり連載を続けてきたが、記事を執筆する上で支えていただいた多くの方々に厚くお礼を申し上げたい。当連載では、ソフトウェアとビジネスで先行する海外勢に、日本企業が追随するためのノウハウを余すことなくお伝えしてきたつもりだ。日本企業がハードウェアだけでなく、ソフトウェアとサービスビジネスで世界を席巻することを心から願い、その日が訪れるまで立ち止まることなく応援し続けたいと思う。
(連載完)
筆者プロフィール
前田 利幸(まえだ としゆき) タレスDIS CPLジャパン株式会社(日本セーフネット株式会社/ジェムアルト株式会社)ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアアプリセールスコンサルタント ビジネス開発部 部長
ソフトウェアビジネスに取り組む企業に対して、マネタイズを実現するためのコンサルティングやトレーニング、ソリューション提案を実施。全国各地で収益化に関するセミナーや講演活動を展開。IoT関連企業でシニアコンサルタントを経て現職。同志社大学 経営学修士(MBA)。二児の父。
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