製造業の「稼ぐDX」に向けた戦略を立案するための5つのプロセス:サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(9)(1/3 ページ)
サブスクリプションに代表される、ソフトウェアビジネスによる収益化を製造業で実現するためのノウハウを紹介する本連載。第9回は、製造業がソフトウェアで「稼ぐDX」を実現させるための戦略立案の代表的な5つのプロセスを紹介する。
新しい製品やサービスのビジネスモデルや、サブスクリプションを実現させる場合に、いきなり技術的な要件から詰めていくケースがあるが、これはあまりいい結果にならないことが多い。技術的に何ができるか? を知ることは重要ではあるのだが、まずはビジョンを掲げて戦略を立てて、どんな顧客体験を価値として提供できるのかが最も重要であることを忘れてはならない。
製造業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するのは、単なるテクノロジーの話ではない。その企業の明確なビジョンがなければDXを達成し得ることは決してないと断言できる。
それでは、製造業がソフトウェアで「稼ぐDX」を実現させるためには、最初に何を検討すべきなのか、具体的にどこから手を着けていくべきなのか。ソフトウェアによる収益化の戦略立案に向けた代表的な5つのプロセスを、できる限りシンプルにステップバイステップで解説していきたいと思う。
⇒連載「サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代」バックナンバー
収益化の戦略立案のプロセスとは
ソフトウェアによる収益化に取り組んで成功を収めた企業に共通しているのは、ソフトウェアで収益を得るための明確なビジョンや戦略がある。まずは市場動向を調査して、自社のビジョンを描き、戦略を立てることが必要だ。
1.市場を理解する
市場は日々変化しつつある、ターゲットとなる市場がどのような状況に至って、自社を取り巻く環境はどのような状況で、どう変化しているのか、ニーズとトレンドの把握を行ってビジネス環境をあらためて理解する必要があるだろう。
例えば、世界市場において、日本のエレクトロニクス系の最終製品は売り上げ、シェアともに10年前よりも落ち込んでいる。これは、日本のエレクトロニクスデバイスメーカーにとってモノの売れない時代に拍車が掛かっている状態であることを認識する必要があるだろう。
さらに、日本の製造業のROE(自己資本利益率)水準は常に低空飛行を続けている。米国や欧州の8.5%に対して、日本は5.8%と低い。こういった背景から、日本の製造業には、新しい価値獲得や収益向上を図るような、低収益性に対する対処が重要になってくるといえる。
加えて、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などを活用した競合他社の動向や異業種からの参入など、市場には従来の形から変えた新たなアプローチが日々生まれてくる。そして、コロナ禍において、ライフスタイルやビジネス環境が大きく変化して、顧客のニーズも大きく変化している。現時点でデジタル化に後れを取っている産業も、一気に生まれ変わっていく可能性もある。こうした自社の取り巻く環境やトレンドを捉えて、生き抜く手段を導き出していくのだ。
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