3D造形で40%軽量化、ヒューマノイド連携も シーメンスが描く次世代DX:JIMTOF2026

シーメンスは「JIMTOF2026(第33回日本国際工作機械見本市)」において、産業機械の設計から製造、運用までをシームレスにつなぐ「デジタルスレッド」の最新ソリューションを披露した。

» 2026年10月30日 07時15分 公開
[安藤照乃,MONOist]

 シーメンスは「JIMTOF2026(第33回日本国際工作機械見本市)」(2026年10月26〜31日、東京ビッグサイト)において、産業機械の設計から製造、運用までをシームレスにつなぐ最新ソリューションを披露した。展示テーマに「Digital Thread for Machine Engineering」を掲げ、工作機械のデジタルツインと実機を連動させるデモンストレーションや、製造現場でのヒューマノイドロボットの活用シミュレーションなどを公開した。

JIMTOF2026で最新ソリューション群を披露した JIMTOF2026で最新ソリューション群を披露した[クリックで拡大]

 グローバルテクノロジー企業である同社は、CNC制御装置から設計/加工用ソフトウェアなど、工作機械における一貫したソリューションを提供している。同社 産業機械 ストラテジー&マーケティング シニアバイスプレジデントのラフール・ガーグ氏は、日本の工作機械市場の現状について、「日本からの輸出も多く、ビジネスとして非常に好調だ。しかし一方で、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の能力を十分に活用できていないという課題がある」と指摘した。

 今後、グローバル競争を勝ち抜くためのスピードと生産性向上の鍵となるのが、「デジタルツイン」と「デジタルスレッド」だという。デジタルツイン環境では、設計ソフトとCNC制御を統合し、実機を作ることなく3D空間上で稼働評価や要件変更を事前検証できる。さらに、部門間をデータでつなぐデジタルスレッドを構築することで、変更情報を全チームで即座に共有し、迅速なテストと対応が実現する。

シーメンスの(左)カーステン・ホイザー氏と(右)ラフール・ガーグ氏が、ブースで記者らにソリューションを説明した シーメンスの(左)カーステン・ホイザー氏と(右)ラフール・ガーグ氏が、ブースで記者らにソリューションを説明した

3Dプリンタで6つのオイルポンプ部品を同時に造形

 ブースでは、積層造形の活用事例として、ロールス・ロイスの航空機エンジン部品の製造プロセスを紹介した。1台の3Dプリンタによる1回の造形ジョブで、6個のオイルポンプ部品を同時に造形する。検証のために6個がバラバラの造形で作成することも可能だ。また、従来の切削や鋳造による製法から積層造形へと移行することで、部品重量の30〜40%軽量化を実現しているという。

NX CAMによる機械加工のシミュレーション NX CAMによる機械加工のシミュレーション[クリックで拡大]

 3Dプリンタで造形した直後の部品は表面が粗く、最終製品として使用するにはミリング(フライス加工)などの後加工が必要になる。シーメンスの環境では、積層造形向けのデータと後加工用の切削プログラムが単一のソフトウェア上で連携することで、一環で管理/実行が可能だ。

 設計データから後加工への移行には、CAD/CAMソフトウェア「NX CAM」を活用する。「Designcenter NX」で作成した3次元モデルを引き継ぎ、Gコード駆動の機械加工シミュレーションを用いて、仮想環境上で工作機械の動作を事前に検証する。部品や取付具を含めた3Dモデルに基づいて動作の妥当性を確認し、多軸加工時の干渉回避や段取りの最適化、再加工リスクの低減を図る仕組みだ。

3Dプリンタで造形したオイルポンプ部品 3Dプリンタで造形したオイルポンプ部品[クリックで拡大]
(左)HELLERのCNCマシンと、(右)シーメンスのCNCシステム「SINUMERIK ONE」の操作盤[クリックで拡大]

 会場では、仮想空間での事前検証結果を現場の実機と連携させるデモンストレーションも行った。ドイツのHELLER(ヘラー)のCNCマシンと、シーメンスのCNCシステム「SINUMERIK ONE」の操作盤を並べて配置した。仮想工作機械ソリューション上で検証したNCプログラムを用いて実機の動作を直接制御し、設計から加工までデータが途切れないプロセスを体現していた。

製造現場でヒューマノイドロボットが連携

 ブースでは、直近で注目が高まっているヒューマノイドロボットが製造現場で連携するデモンストレーションも行った。自社でロボット自体を製造/販売するのではなく、さまざまなメーカーのロボットを自社の製造ラインに組み込む検証を実施している。

ヒューマノイドロボットによるデモンストレーション ヒューマノイドロボットによるデモンストレーション[クリックで拡大]

「製造現場におけるヒューマノイドロボットの活用はまだ黎明期にあり、実際の現場で稼働させるにはAI(人工知能)の学習と大量のデータが必要になる。そこで当社は、ロボットの実機を導入する前のソリューションとしてデジタルツインを提案する。人間の作業環境とロボットのデジタルツインを組み合わせることで、ロボットの動作や人間との連携における安全性を仮想空間上で事前にシミュレーションし、学習データを収集/評価できる環境を提供する」(ガーグ氏)

全てのソフトウェアにAIエージェントを組み込む

 シーメンスは、設計から製造までのサイクルをさらに加速させる次なる戦略として、全てのソフトウェアツールにAIエージェントを組み込む方針を打ち出している。同社 アディティブ・マニュファクチャリング担当 バイスプレジデント 博士のカーステン・ホイザー氏は、「このAI実装によってソフトウェアの操作や設計プロセスが以下の3つのステップで進化する」と説明した。

 ステップ1は、チャットbotのようなサポート機能の追加である。これまで数十回のクリックを要していた特定の設計作業などを、AIへのテキストや音声による指示を通じて、数回のクリックで実行できるようにする。この機能はすでに一部で実装されている。ステップ2は、自然言語によるプログラミングへの移行である。作業者がプログラミング言語を直接記述する代わりに、日本語や英語などの音声などで自然言語で指示を入力すると、ソフトウェアが指示を解釈し、内部で自動的にプログラムに翻訳して実行する仕組みとなる。

 ステップ3は、複数のAIエージェントが連携して自律的に動作するエージェンティックAIの実現である。例えば「特定の形状のボトルを設計する」という要件に対し、1つのAIエージェントが何万通りもの設計パターンを自動生成し、別のAIエージェントが評価と選別を行うといった一連の作業を、ソフトウェア内で連携して実行するようになる。

 シーメンスは今後も、AIエージェントやヒューマノイドロボットを含めた最新技術をデジタルツイン上で統合し、工作機械メーカーとユーザー双方のDXを支援するソリューションの展開をさらに加速させていく構えだ。

⇒その他の「工作機械」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR