DMG森精機社長が目指す「止まらない工作機械」 無人化で残る「人の仕事」とは:FAインタビュー

AI時代において工作機械はどう進化し、製造業における「人の役割」はどう変わっていくのか。DMG森精機の取り組みと今後のビジョンについて、同社 代表取締役社長の森雅彦氏に話を聞いた。

» 2026年11月06日 07時00分 公開
[長沢正博,MONOist]

 AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)をはじめとする著しい技術の進化が製造現場を変えようとしている。AI時代において工作機械はどう進化し、製造業における「人の役割」はどう変わっていくのか。工程集約と自動化、DX(デジタルトランスフォーメーション)による「MX(マシニングトランスフォーメーション)」を進めるDMG森精機の取り組みと今後のビジョンについて、同社 代表取締役社長の森雅彦氏に話を聞いた。

年6000時間へ、稼働時間を増やすことが重要

MONOist DMG森精機では先日、機械の不具合の解消を生成AIがサポートする「サービスエージェント」を発表しました。今後のAI活用のビジョンを教えてください。

森氏 AIには幾つかの使い方がある。

 工作機械そのものに組み込んでいくAI、工作機械を購入したお客さまに使っていただくAI、われわれが社内で設計時などに使うAI、われわれのMRO(Maintenance:整備、Repair:修理、Overhaul:オーバーホール)エンジニアがお客さまの元に赴いた時に使うAIなどが、工作機械ならではのAIになってくるだろう。

 工作機械に組み込むAIに関しては、AIで加工中の切りくずの堆積状況を分析して効率的に除去する「AIチップリムーバル」や、各種センサーのデータを基にクーラントの流量を自動で最適化する「Adaptive Coolant Flow」なども既に提供している。

DMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏 DMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏

 お客さまをサポートするAIに関しては、1台1台の工作機械もしくはお客さま1人1人にAIエージェントが付いて、過去の加工事例を探してきたり、ワークのつかみ方を考えたり、機械のメンテナンスを手伝ったりするようにしたい。

 社内で使うAIでは、機械を作る前にデジタルツイン上で熱変位や振動を再現して、生成AIで過去の設計情報を参照する取り組みを開始している。今後は、各設計者にAIエージェントが付き、高度にサポートをしていくだろう。配線や配管なども自動で割り付け、検図などをAIで行っていく形になる。

 MROエンジニアが使うAIでは、過去20年強分の事例データをデジタル化してあり、お客さまの機械の状態からAIが直し方を提案したり、部品の交換時期を予測して欠品を防いだりできるようにする。

 今、忙しい工場だと工作機械は年間6000時間稼働しているが、多くは年間2000時間くらいしか動いていない。この平均値を上げていくことが重要だ。これによって設備台数を減らし、中間在庫を減らし、省エネルギー化、省人化を進めることができる。

 工作機械メーカーの仕事は、廉価な機械を大量に作るのではなく、高機能な機械をお客さまと対話しながら作り込んでいく、やりがいのある仕事になる。

人がやるべきは受注活動、世界で現地企業に打ち勝つべき

MONOist AIの活用によって機械が高度化し、今後、加工現場の自動化/無人化が進むと、人がやるべき「仕事」はどんな領域になっていくと考えていますか。

森氏 会社という視点で見るならば、人がやらなければならないのは受注活動だ。

 日本の製造業で足りなかったのは「営業」ではないだろうか。例えば、英国の企業なら英語を使って世界中で受注活動ができる。日本企業には言葉の壁があるが、そんなことを言っている場合ではない。中国でも米国でも現地の企業に打ち勝って、注文を取ってこなければならない。

 中小企業におけるM&Aも必要だろう。適切な待遇で後継者のいない会社を買収して間口を広げるなど、賢いM&Aで企業のサイズを大きくしていくことだ。もし(採用で)人が来ないなら、しっかりとコスト計算した上で、おいしい食事を提供したり、工場をきれいにしたり、給与水準を上げたりする必要がある。

 われわれの機械は1台で年間数千時間稼働できる。それを10台持っているなら、(人の)「仕事」は機械が稼働できる数万時間分の仕事を取って来ることであり、数万時間の中でできるだけたくさんのワークを削れるようにプログラムをすることになる。

 そして、プログラムされた指令を機械が故障することなく、精度よく作り続けられるようにすることが、工作機械メーカーの「仕事」だ。

本格的な5年保証実施へ、工作機械の耐久性を向上

MONOist 森氏が「究極の工作機械」を作れるとしたら、それはどのような姿でしょうか。

森氏 ワークに対して適切な圧力やスピード、切り込み深さでツールを当て、振動や熱変位なくワークを削るというのが工作機械のあるべき姿だ。

 その中で、切削やミーリング、砥石、歯車など用途に応じた刃具や、測定用のプルーブなどを自由自在につかみ変えられる、旋削機能付きの工作機械がワークのサイズに応じて10種類くらいそろうと、何でも削れるようになる。

 あとはワークと、ワークを載せたパレットのハンドリング、工具の交換や切りくずの排出までが10〜20台のAMR(自律型搬送ロボット)を制御してフレキシブルにできるようになるとかなり面白い。

 われわれは、2030年頃から本格的に5年保証を始める。そのために今、工作機械の耐久性を徹底的に変えている。既に70%超の要素の設計基準が6万時間以上になっており、5年保証は目に見えてきている。年間6000時間の10年分だ。実際はまだ年間2000〜3000時間なので、25年以上使えることになる。これを部品交換なく、できるようにしたい。

 そのためにはコネクティビティが重要になる。機械はどうしてもばらつきがあるため、その場合は故障の予兆などを早目につかんで交換できるようにしなければならない。

「JIMTOF2026」でのDMG森精機の出展テーマは「NEVER STOP MANUFACTURING THE FUTURE」だった 「JIMTOF2026」でのDMG森精機の出展テーマは「NEVER STOP MANUFACTURING THE FUTURE」だった[クリックで拡大]

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