冷却中に溶媒が蒸発する場合は、その分だけ母液に残る溶質が減ります。先ほどの例において、仕込んだ水の5%が蒸発すると仮定します。この場合、析出量は約38.1kg(蒸発なしの時は37.3kg)です。溶解させる水が減ったことで析出量は増加しました。
蒸発があるときは、水の行き先が母液と蒸気に分かれます。蒸発した水も合計して収支を合わせます。
この蒸発の効果を利用した操作が蒸発晶析です。飽和溶液の温度を保って溶媒を蒸発させる場合、前後の溶解度が同じだとすると、蒸発した溶媒量とその溶解度の積が析出量になります。冷却で溶解度を下げる場合も、蒸発で溶媒を減らす場合も、前後の差から求める考え方は同じです。
先ほどの60℃飽和溶液を、連続式の冷却晶析装置に500kg/hで供給する場合を考えます。同じ温度条件で、蒸発もなく、平衡を仮定します。溶液100kg当たり37.3kgの結晶が得られるので、結晶の生産量はその5倍の約187kg/hです。
ここでは、十分に混合された定常槽から、結晶と母液を一緒に抜き出す場合を扱います。必要なスラリーの保持容積Vは、出口スラリーの体積流量Qと平均滞留時間τの積で計算します。スラリーは結晶と母液の混合物です。質量流量から体積流量へ直すには、その混合物の密度が必要であり、結晶だけの密度を使ってはいけません。
出口スラリーの密度を1400kg/m3、平均滞留時間を2時間と仮定します。出口スラリーの質量流量500kg/hを密度で割ると体積流量は約0.357m3/hです。さらに滞留時間を掛けると、必要な保持容積は約0.71m3となります。
ただし、ここで使う平均滞留時間は、槽内の全ての結晶が同じ時間だけ滞在することを意味しません。実際の装置ではショートパスができることで早く系外に出たり、流れの悪い滞留部ができたりもします。これにより粒径などに影響することがあります。さらに、装置サイズに合わせて、これまで解説した伝熱や撹拌(かくはん)の条件を設計しなければなりません。特に撹拌は、結晶の破壊が起きないよう考慮も必要です。
今回は、溶解度データを出発点に、析出量と収率の計算から保持容積の概算までを解説しました。まず溶解度の単位と計算の前提をそろえ、溶質と溶媒の収支を確認することが大切です。
溶液から結晶を取り出す晶析の考え方
固体表面で分子を捕まえる吸着の考え方
ガス吸収塔の設計計算の考え方
気液間の物質移動、ガス吸収の考え方
三角線図を用いた抽出の設計
抽出の基本原理
蒸留塔の理論段数と還流比の計算Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
素材/化学の記事ランキング
コーナーリンク