前回はガス吸収の基礎について取り上げました。今回は、ガス吸収塔の寸法を決める設計計算の考え方について解説します。
ガス吸収塔の設計で主に決めたいのは、塔径と塔高の2つです。塔径は「ガスと液をどれだけの流量で流せるか」に、塔高は「どこまでガス成分濃度を下げられるか」に関係します。まずは平衡線と操作線を考え、各相における吸収させたい成分の濃度に着目します。
前回紹介したヘンリーの法則y=mx(m:ヘンリー定数)から引かれる平衡線は、希薄なガスの吸収において成り立つ「自然の法則」を表す線です。これ以上ガスが溶け込まない限界である気液平衡を示します。
一方、操作線は「装置側の制約」を表す線です。まずは塔全体の物質収支を考えます。気相でのモル濃度を(y)、液相でのモル濃度を(x)、塔頂を(T)、塔底を(B)、ガス流量を(G)、液流量を(L)とします。ガスが液に吸収されることから、ガスから抜けた成分量と液に吸収された成分量は同じです。物質収支式はG(yB-yT)=L(xB-xT)と表せるため、塔内のどの高さでもガスと液の濃度が傾きL/Gの直線として表現できます。xTは供給する吸収液ですので、基本的に濃度を0で考えます。
操作線の傾きがL/Gで表されるため、吸収液流量を減らすと、塔底の液濃度が平衡に近づいていきます。この下限の液量が最小液流量です。そもそも操作線と気液平衡線の間のズレ(推進力)が大きいほど、ガス吸収は速く進行します。操作線と平衡線の交点においては、推進力が無くなるため、これ以上吸収されなくなります。最小液ガス比での設計において、吸収塔高さは無限に発散してしまいます。実際の設計では最小液ガス比の1.2〜2.0倍(参照:改訂6版 化学工学便覧 p596)の液ガス比が設定されます。
液量を増やせば塔は短くて済みますが、ポンプ動力や液処理設備のランニングコストが膨らみます。逆に液量を絞れば塔が高くなり、塔本体や充填物のイニシャルコストが増します。最適点は経済性や設置スペースなどにより決定されます。
次に塔径を決めます。吸収塔では、ガスを下から上へ、液を上から下へ向流で流すのが基本です。塔径を小さくすると、同じガス流量でも塔内のガス流速が高くなります。ガスの上昇流速が高くなりすぎると、下降する液の流れが妨げられ、塔内に液がたまりやすくなります。その結果、圧力損失が急激に増加し、液の偏りや飛沫同伴が起こって、安定した気液接触ができなくなります。この状態をフラッディングと呼びます。
そのため、塔径はフラッディングが起こる限界ガス流速よりも十分低い流速、例えばフラッディング速度の60〜80%程度で運転できるように決めます。決定したガスの流速と体積流量から必要な塔の断面積が求まり、塔径が決まります。
フラッディング速度「Us」を求めるために、エッカート線図を利用します(参照:Kister et al.,Kister et al.,“Realistically Predict Capacity and Pressure Drop for Packed Columns,”CEP,July 2007)。事前に準備が必要なパラメータは、LやG以外に次の値が必要です。
計算式は図2に載せています。FLVの値に対応するCPの値をエッカート線図から求め、設備に応じた充填率(充填物因子)「Packing Factor(Fp)」の値からCsを計算します。このCsの値からUsが求められます。圧損曲線は、許容したい塔内圧力損失から選ぶ線ですが、明確に設定が無い場合、まずはΔP=0.5〜1.0in H2O/ftを参考値として利用してみてください。また、Fpは「採用する充填物の種類/材質/サイズ」に対応する経験的パラメータです。化学工学便覧などから確認します。
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