「ITmedia Virtual EXPO 2026 夏」において、BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン ホビークリエイション部 生産戦略チームの佐野翔紀氏が行った講演「ガンプラ材料の挑戦、ファンに愛され続けるための取り組みとは」の一部を紹介する。
製造業向けの国内最大級のオンラインイベントである「ITmedia Virtual EXPO 2026 夏」(主催:ITmedia Virtual EXPO 実行委員会)が8月25日〜9月25日に開催された。同イベントでは企業事例や有識者の講演を通じて、モノづくりの戦略策定と課題解決につながるヒントを提供している。
本稿では、各セミナーの中から「ガンプラ材料の挑戦、ファンに愛され続けるための取り組みとは」と題してBANDAI SPIRITS ホビーディビジョン ホビークリエイション部 生産戦略チームの佐野翔紀氏が行った基調講演の模様を紹介する。
1980年にポリスチレン100%で量産を開始した「ガンプラ」。同講演では、そこから45年の歴史の中で「組み心地」や「質感」「動きの再現性」「環境配慮」を追い求めることで生まれた同社の「原料からこだわるモノづくり」について解説された。
最初のガンプラは1980年に100%PS(ポリスチレン)製の144分の1モデルで発売された。その後、軟質素材であるポリエチレン材料から作られたポリキャップを開発および関節部分に採用、高強度なABS材料による大型商品の強度アップ、強化PSによる強度と質感のバランスと、材料の幅を増やしガンダムシリーズの動き再現やパーツの質感を具現化することで、ファンの期待に応えてきた。
ガンプラの材料開発のきっかけとなったのはポリエチレン(PE)の開発だ。1980年に発売されたPS製のガンプラは広い可動域が好評だったが、関節部分の摩耗という課題もあった。そこで柔軟性と耐摩耗性が高く、低摩擦性も持ち合わせているポリキャップを用いた関節パーツを使用することで、他パーツとの心地よいフィット感を向上させつつ、パーツ間の摩耗課題を解決した。
強化PSは、ABS材料が持つ破断しにくさを維持したまま、塗装ができないというデメリットを、PS材料をベースにすることで克服するという良いとこ取りを実現した材料だ。現在でもさまざまなパーツに採用されている。また、関節部分に強化PSを用いることでポリキャップを使わないタイプも開発し、関節構造をスリムにすることも可能となった。
さらに通常のPSでは出しにくいマットな質感(光を反射せずテカリを抑え、洗練された雰囲気を演出する)を実現しており、多角的な評価から今ではフィギュアなどにも採用されている。
同社の材料への取り組みの歴史を振り返ると、初期は機能課題の解決や構造性能アップが中心だった。現在ではファンの期待に応えるアイテムを作るために「具現化」「安定生産」「驚き」の3つのポイントで価値を最大化できる材料開発に重点を置いている。
このうち、「驚き」に特化した例では、劇中でモビルスーツの装甲に革命をもたらした素材であるガンダリウム合金を「地球で、プラモデルで再現したい、本物のガンダムに近づけたい」という夢から始まったガンダリウム合金モデルの企画がある。この企画で生まれた商品はガンプラの未来へとつながるメッセージを込めたプラモデルとなった。「従来とは性質が大きく異なる材料のため未知の領域だったが、具現化と驚きを目標にエンジニアが愚直にトライ&エラーを重ねることで技術を積み上げた結果」と佐野氏は振り返る。
同社の行動原理は「何もやらないのはゼロ点」というマインドであり、一見難しそうな題材でも、すぐに各チームのプロが集まり、やれる方法をゼロベースで検討することで前例を打開してきた。
最近では、具現化の枠がさらに広がり、質感を再現するだけでなく、環境負荷が低いが使いどころが難しい材料も、その個性をそのまま生かし、商品の特性と組み合わせることで、ファンに驚きを与えている。
例えば、ヴィンテージ感を演出したいときには、プラモデルに木の粉を混ぜた材料を使い、木の暖かな風合いを生かし、ヴィンテージ感を再現している。木粉材は、製材の際に発生する木粉をコンパウンド材として使用することでプラスチック材の含有量を下げるなど環境負荷の低減にも貢献する。このようにリサイクルに対して付加価値をつけることも新規材料の使用時には意識しているという。
その最たるものが、サステナブル材料など持続可能な材料の活用体制を構築することを目指した、ガンプラリサイクルプロジェクトだ。これは、組み立て終わったときに残るランナー(複数の部品をつないで固定している枠の部分)を回収ボックスに持ってきてもらい、プラモデルにリサイクルすることで循環型社会の形成に貢献していくことを目標としている。
このプロジェクトには3つのポイントがある。その1つはグループリソースの活用だ。リサイクルの起点となる回収BOXの設置スペースや設置後の運用/管理をバンダイナムコアミューズメントが展開するゲームセンターなどの施設で行う。
各店舗で回収したランナーを静岡の工場に運ぶのがバンダイロジパルだ。同プロジェクトを発案から4カ月でスタートできたこともグループが一丸となって推し進めた結果だという。
2つ目はパートナーとの連携が挙げられる。同プロジェクトで掲げているのは循環型社会の形成であり、究極は「ガンプラtoガンプラ」となる。それを可能とするのが原料に戻して再利用するケミカルリサイクルの技術だ。パートナー企業とともに試作を重ね、2025年に商品化が実現した。廃材をフレーク状にしてそのまま成形するマテリアルリサイクルについてもチャレンジを継続中。最短ルートで再度成形できる方法を模索しており、パートナー企業に相談しながら挑戦を続けている。
これにより目指すものは「エコは安い/楽しい」という願いの実現だ。
加えて、条件が毎回変わる粉砕材の安定生産も重要だ。確定できればさらに商品を安く提供できるほか、エコ商品の持つ個性をプラモデルにも生かすことが可能となるなどプラスの要素が増える。なお、マテリアルリサイクルについては、2026年度に環境や安全性への配慮を証明する国際認証「SGSグリーンマーク」を日本企業で初の事例として取得した。
3つ目のポイントはファンの存在だ。企業とファンがより深くつながることで、共に未来を創っていくという気持ちが高まり、ファンが自分ゴトのアクションとして考えてもらえるものと思っている。ファンとの交流の中ではプラスチックの再資源化についてそれぞれの考えを育み、学びを広げるガンプラアカデミアやCLEAN OCEAN ACADEMIAなどの活動も実施している。
今後は未来を見据えた持続可能な材料開発に力を注ぐ方針だ。「ポイントは注目されがちなリサイクルだけでなく資源全体をどう有効活用していくかにある」(佐野氏)という。リデュースの観点では石油由来を減らした樹脂の共同開発や設計面での工夫も行うことにしている。さらに、より広く、深くファンとつながっていく取り組みも模索している。
「一人の人間が成長していく中で、常に同じプラスチックが形を変えて寄り添っていけるような循環型社会ができると当社らしいと感じている」と佐野氏は意欲を見せた。
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究極のガンプラ to ガンプラを目指し、BANDAI SPIRITSがファンとともに創る循環型社会Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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