本連載では、コンシューマー向けにロングセラー商品を展開する企業に、同商品における材料の変化やその背景、材料選定に対する考え、今後の展開などをインタビューし、紹介する。第1回ではBANDAI SPIRITSの取り組みを取り上げる。
多くの一般消費者から支持されて、長期間にわたって売れ続ける商品を指す「ロングセラー商品」。本連載ではコンシューマー向けのロングセラー商品の素材にスポットライトを当て、同商品の素材に関するメーカーの取り組みを紹介する。
第1回は、2025年に発売から45周年を迎えたガンダムシリーズのプラモデル「ガンプラ」を展開するBANDAI SPIRITSの取り組みを取り上げる。ガンプラは2024年9月に累計出荷数が8億個を突破し、今なお世界中のユーザーにプラモデルを組み立てる楽しさを提供している。
BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン ホビーマーケティング部 兼 ホビークリエイション部 デピュティゼネラルマネージャーの松橋幸男氏、ホビーディビジョン ホビークリエイション部 設計第一チーム マイスターの高尾典弘氏、ホビーディビジョン ホビークリエイション部 生産戦略チーム マネージャーの脇田敏之氏に、ガンプラの材料の変化やその背景、材料選定に対する考え、今後の展開などを聞いた。
MONOist ガンプラの材料の変化やその背景について教えてください。
高尾典弘氏(以下、高尾氏) 当社は1980年7月に最初のガンプラである「1/144 ガンダム」を発売した。1/144 ガンダムを含めて初期(1980年前半)のガンプラは100%ポリスチレン(PS)製だった。PS利用の背景には、加工しやすく製造工程で使い勝手が良かっただけでなく、購入した一般消費者が塗装しやすいといった利点がある。
しかし、1979年にテレビ放送を開始したロボットアニメ『機動戦士ガンダム』に登場するガンダムや他のモビルスーツのダイナミックな動きを当時のガンプラで再現すると、関節などが摩耗し、へたる(機能性が低下する)という課題があった。
そこで、1980年代後半にガンプラの関節に軟質素材であるポリエチレン(PE)を採用した。これにより、関節部分が摩耗しにくく、スムーズに可動できるようになり、アニメに登場するガンダムなどのダイナミックな動きをガンプラで再現しやすくなった。なお、当社ではPEを「ポリキャップ」と呼称してガンプラで利用している。
1980年代後半において「ポリキャップ」が初めて採用されたガンプラである「1:60 ジオン軍モビルスーツ シャア専用ザク」(1980年12月販売開始)[クリックで拡大] 出所:BANDAI SPIRITS、(C)創通・サンライズまた、1995年7月に発売したガンプラのブランド「マスターグレード(MG)」などの大型なプラモデルではABS樹脂を活用している。ABS樹脂は高強度であるため、強度が求められる大型のガンプラで役立っている。一方、ABS樹脂は、塗装すると割れやすく、加工しにくいという難点があった。
ABS樹脂が初めて採用された「マスターグレード」のガンプラである「1/100スケール マスターグレード 地球連邦軍 先行量産型モビルスーツ RX-79〔G〕陸戦型ガンダム」(2000年5月販売開始)[クリックで拡大] 出所:BANDAI SPIRITS、(C)創通・サンライズこの解決策として2007年に「強化PS(KPS)」の開発に着手し、2008年に完成させた。KPSは、PSの「塗装/加工のしやすさ」とABS樹脂の「破断しにくさ」を併せ持つ素材で、関節部分や他のパーツにも使える。そのため、さまざまなガンプラに2010年代半ばから採用している。加えて、関節部にKPSを活用することで、一部のガンプラでは「ポリキャップレス」が進み、関節構造がスリムになっている。ちなみに、KPSは製品のパッケージにPSとして表記している。また、KPSは通常のPSにはないマットな質感を実現しており、この点が評価され、フィギュアなどにも採用している。
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