MONOist 過去から現在に至るまでにガンプラでさまざまな素材を採用していますが、生産技術にも変化が起きているんでしょうか。
脇田敏之氏(以下、脇田氏) ガンプラの生産拠点「バンダイホビーセンター(静岡市葵区)」で採用しているガンプラの基本的な生産手順を紹介する。まず原料のPSを熱で溶かし、220〜230℃のゲル状にする。次に、50t〜150tほどの圧力で金型を型締めし、その後、ゲル状の樹脂を射出成形機で金型に流し込む。樹脂が固まった後、ガンプラが完成する。
現在は、PS、KPS、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などさまざまな素材が活用されているが、製造スピードは、初期のガンプラと比べて約1.3〜1.4倍に向上している。
こういった生産効率化の要因には、「流動解析技術」や「KPS」の活用がある。
「流動解析技術の活用」に関して、コンピュータ上で製品の性能をシミュレーションし、設計を最適化する技術「CAE解析」の1種である流動解析を行うことで、射出成形機から金型内に射出された樹脂の充填(じゅうてん)挙動を解析している。当社では流動解析を活用することにより、金型で樹脂が固まるタイミングを0.1秒単位でシミュレーションしている。そのデータを用いて、冷却時間を極限まで短縮し、無駄な待ち時間を削っている。
KPSの活用について、主力素材であるKPSを含むPS系素材は流動性が高く、低い温度で成形できるため、昇温/冷却の時間がABS樹脂などより短く済む。さらに、PS系素材は収縮が少なく、成形直後に良品判断ができるため、ABS樹脂のように「1日寝かせて確認→不良なら廃棄」というタイムラグや材料ロスが発生しにくい。
加えて、ガンプラ発売10周年を記念して1990年に発売したガンプラのブランド「ハイグレード(HG)」から利用を開始した多色成形機も生産の効率化に貢献している。多色成形機は同素材はもちろん、異素材も成形できる機械で、この機械により4色のカラフルなランナー(部品が取り付けられているプラスチック製の枠)や、性質の違うプラスチックを組み合わせた関節部品などが生み出されている。
多色成形機で成形されたランナーが採用された「ハイグレード」のガンプラである「1/250 ガンダム」(1983年7月販売開始)[クリックで拡大] 出所:BANDAI SPIRITS、(C)創通・サンライズまた、ガンプラの製造を行う職人の技術とデジタル技術(流体解析など)の融合も生産の効率化に貢献している。現在も、職人の長年の経験による「(生産工程の課題は)ここが怪しい」「こうすればよくなる」という感覚は生かされている。デジタル技術では、成形機の波形データなどを分析し、職人の感覚を数値化している。
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