今回開発したコールドプレートは、製造プロセスにおいても独自のアプローチを採用している。中津氏は「金属の削り出しなどの機械的な加工は一切用いていない」と説明する。具体的には、プリント基板の製造工程と同様の手法を応用し、エッチング処理によって微細な流路パターンとなる穴を開けた薄い銅箔を数十枚重ね合わせ、熱圧着によって接合する積層構造だ。今回公開された試作品では「40〜50枚の積層が適切と考えている」(中津氏)という。
銅箔を重ねる枚数や穴のパターンを変更するだけで、U字トンネル流路の深さや直径を自在に調整できる。そのため、進化を続ける多様なGPUの形状や発熱特性に合わせた最適化が容易であり、低コストでの大量生産も期待できる。
日立製作所は、1990年代の大型汎用機「MP5800」におけるLSI冷却モジュールや、電気自動車(EV)用インバーター向けの世界初となる直接水冷型両面冷却パワーモジュールなど、各時代の最先端で冷却技術を先導してきた歴史を持つ。今回の新技術開発の出発点について中津氏は、「今までもさまざまな冷却技術を開発してきたからこそ、『従来の冷却技術が抱える真の課題やトレードオフとは何か』を根本から理解し直すことが着眼点の原動力となった」と語った。
同社は、今回開発したGPU冷却用コールドプレートを単体部品にとどめず、ポンプやチラー、配管を含めた冷却設備全体の高性能化に向けた起点と位置付けている。さらに、これらの設備と自社のデジタルソリューション「HMAX Data Center」を連携させる方針である。ハードウェアの強みに加え、データやデジタル技術による運用最適化を組み合わせることで、データセンター全体の省エネルギー化と高効率運用を推進する構えだ。
早期の事業化に向けた展開について中津氏は、「具体的な市場参入のタイミングなどは模索中である。しかし、今回の技術で得られた結果は業界が求める水準に近い。データセンター事業は変化のスピードが非常に速いため、実機での検証を含めて可能な限り早期の事業化を図りたい」と語った。世界的な急務となっているAI(人工知能)データセンターの電力消費抑制に向け、早期の社会実装を目指す方針である。
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