日立の新型GPUコールドプレートは何がすごいか 40℃超高温水冷却のメカニズム:組み込み開発ニュース(2/3 ページ)

» 2026年10月23日 06時45分 公開
[安藤照乃,MONOist]

熱力学的に読み解く「U字トンネル流路」の物理的優位性

 従来、主流であったスカイブフィン構造やピンフィン構造のように水平方向へ冷却水を流す方式は、流路の後半で水温が上昇し、均一な冷却が困難になる課題があった。また、垂直に水を吹き付けるジェットフィン構造も、熱を奪って温まった戻り水と冷たい噴流が衝突し、冷却効果を阻害する弱点があった。これらの効率低下を補うために流路を微細化して伝熱面積を増やすと、流路内の抵抗(圧力損失)が増大し、冷却水を循環させるポンプの消費電力が肥大化するというトレードオフが生じていた。

従来方式のコールドプレート 従来方式のコールドプレート[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 こうした課題に対し、日立製作所は冷却水をGPUの発熱部へ直接届けてUターンさせる独自の「U字トンネル流路」構造を採用した。この新構造では、入り口となる入力チャンバーから供給された冷たい冷却水が、数千本の微細な流路を通って発熱部へ向かって垂直方向に流れる。発熱部近傍に到達して熱を奪った直後、冷却水はU字型に方向を変え、温まった状態のまま出口である出力チャンバーへ排出される。入り口側の冷たい水と、熱を回収した出口側の温まった水が内部で混ざらないよう完全に分離されるため、冷却液の混合による冷却性能の低下を抑制し、GPU全体で常に高い冷却性能を維持できる構造となっている。

独自のU字トンネル流路の特長 独自のU字トンネル流路の特長[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 この流路構造は、熱力学的な観点からも理にかなっている。従来のコールドプレートがフィンの表面積を広げて熱を全体に拡散させていたのに対し、新技術では熱を拡散させず、熱源の直近へ冷水を直接供給する設計をとる。これにより、熱源であるGPUと冷却水の局所的な温度差を最大化し、放熱性能を向上させて全ての冷却水を無駄なく吸熱に利用できる。

 また、ポンプ動力を左右する圧力損失の低減も両立させた。流路1本当たりの長さを短縮して摩擦抵抗を抑制すると同時に、数千本の微細流路を多並列に配置することで、限られたサイズ内でも流路断面積を大きく確保した。これにより、水を流しやすくする低圧力損失と、高い冷却性能を両立させることに成功した。

冷却液の効率的利用と温度差の推移 冷却液の効率的利用と温度差の推移[クリックで拡大] 出所:日立製作所

試作を用いた実測評価 冷却電力を30%削減できる見込み

 試作したコールドプレート(60×40×9.6mm)を用いた実測評価では、冷却液流量4L/minの条件において、熱抵抗0.011K/Wを達成した。熱抵抗は熱の伝わりにくさを示す値であり、数値が小さいほど冷却性能が高いことを意味する。中津氏によれば、「0.011K/Wという数値は従来の熱抵抗の約2分の1にあたり、業界における現在の目標値をクリアする水準である」という。

試作品による評価結果 試作品による評価結果[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 また、圧力損失についても27.6kPaに抑えることに成功し、同じ冷却動力で従来構造よりも高い冷却性能が得られることを実測データとして確認した。

 東京などの代表的な都市の外気温度条件を用いて、従来技術(スカイブフィン構造)と新構造における年間の年間のチラー稼働率の変化を試算した結果、GPUから回収した熱を外気へ放出するために必要な冷却電力を30%削減できる見込みを得た。

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