2026年度グッドデザイン賞の総評として、審査委員長の中川氏は「ビジョンに資するデザイン」を2026年度のテーマに掲げた背景について、「モノがあふれる社会で、誰が何のためにそのモノを作るのかが大切な時代なのではないか」と説明。応募用紙でも企業や組織のビジョンの記載を求めたという。
審査では、ビジョンと製品のつながりに加え、そのつながりがユーザーに自然に伝わるかどうかにも注目。中川氏は「全ての企業活動はユーザーに対するコミュニケーションである」とし、個々の製品だけでなく、企業が日頃から何を伝え、どのような活動を積み重ねてきたかも感じながら評価したと語った。
審査副委員長の川上氏が注目したのは、開発の背景やプロセスだ。異なる立場の関係者による対話や意思決定に着目し、「ビジョンの構築からその醸成、そしてそれがどう具現化されるのか。これはまさにデザインの神髄ではないかと思う」と述べている。
大賞に選ばれたEAD50については、楽器づくりの伝統や歴史を大切にしながら発展させる考えをチームで共有している点が心に残ったという。造形にも触れ、「私はドラムはできないが、たたいてみたいと思わされた。そう思わせるデザインであることも、大きなメッセージだ」(川上氏)と評価した。
審査副委員長の鈴木氏は、受賞対象の中でも、特に大賞や金賞などの特別賞に選ばれたデザインを「長い時間を見つめるすごく強いデザイン」と表現した。単に長持ちするという意味ではなく、企業や地域が過去から受け継いだものを現代の課題に対応させ、未来へどうつなぐかという作り手の意思が伝わってきたという。
審査委員の間では、こうした視点を「遠い合理性」という言葉で語り合ったとし、「目の前の課題だけでなく、その先を見据えながら『こういうものが作りたい』『こういう未来を作りたい』と訴えかけてくる。そういうデザインが今、輝いて見えているのだと思う」(鈴木氏)と述べた。
審査副委員長の原田氏は「形だけでなく、時代や社会的背景、歴史、存在価値を踏まえ、デザインの輪郭そのものをもう一度捉え直そうとしている取り組みが多かった」と説明。審査では、応募された取り組みを巡る議論を通じて、今の時代を表すデザインを見いだし、未来へ伝えていくことが重要だと語った。
また、2026年度は地域のデザイン振興に携わる行政担当者らに審査を見学してもらう機会を設けたという。原田氏は「地域全体、日本全体でもっと皆さんと手を取り合って、デザイン自体を盛り上げていけたらと思う」と展望を述べた。
以下、併せて発表された「ロングライフデザイン賞」「グッドフォーカス賞」についても取り上げる。
長年にわたり機能や価値が認められ、将来もそれらを発揮し続けることが望まれるデザインに贈るロングライフデザイン賞には、以下の9件が選ばれた。
グッドフォーカス賞は、社会的な関心の高い4つのテーマで各3件、計12件が受賞した。受賞対象は以下の通りである。
■グッドフォーカス賞:新ビジネスデザイン
■グッドフォーカス賞:技術/伝承デザイン
■グッドフォーカス賞:地域社会デザイン
■グッドフォーカス賞:防災/復興デザイン
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