日本デザイン振興会は、2026年度ロングライフデザイン賞の受賞対象9件を発表した。キッツのバルブ用「菊ハンドル」も選出され、グッドデザイン賞と同時受賞した。1978年に開発され、1980年に発売された菊ハンドルは、操作性から生まれた形の普遍性などが評価された。
日本デザイン振興会は2026年10月15日、「2026年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」(以下、ロングライフデザイン賞)の受賞対象9件を発表した。本稿では、このうち同年度の「グッドデザイン賞」も受賞した、キッツのバルブ用「菊ハンドル」に注目する。
ロングライフデザイン賞は、長年にわたり機能と価値が広く認められ、将来もそれらを発揮し続けることが望まれるデザインに贈られる。普遍的な機能性や意匠性を備えたデザインと、それらを長期にわたって提供する事業者の功績をたたえ、次世代のデザインの指標を示すことを目的としている。
審査対象は、10年以上にわたって販売/提供され、ユーザーから支持を得ているプロダクト、建築、サービス、コンテンツなどだ。今後も継続して提供される見込みがあり、後発のデザインのモデルとなる高い質的水準を備えていることも要件となる。
2026年度は4月1日に推薦と応募の受付を開始し、ロングライフデザイン賞審査委員による選考/審査を経て、以下の9件が受賞した。
菊ハンドルは、総合バルブメーカーのキッツを象徴するプロダクトだ。バルブを操作する人に優しい立体的なデザインを目指し、“大輪の菊の花弁”をモチーフとして、1978年に開発された。工業デザイナーの柳宗理氏が主宰する柳工業デザイン研究会の協力の下、バルブ全体との調和を図りながら、手になじみやすく操作しやすいデザインを実現したという。
1980年の発売以来、菊ハンドルを装着したバルブの世界累計販売数は1億個を超える。現在も建築設備から産業プラントまで、幅広い分野で人々の暮らしと産業を支え続けている。
キッツは今回の受賞について、時代を超えて受け継がれるデザインと、使いやすさや安全性を追求し続けてきた価値が評価されたとしている。今後も、使う人の視点に立ったモノづくりを通じ、社会インフラを支える新たな価値の創造に取り組む考えだ。
両賞の審査委員による評価コメントは以下の通り。
ロングライフデザイン賞
バルブのハンドルといえば、この真っ赤な菊ハンドルが目に浮かぶ。アイコニックな丸い玉は手に優しく、鮮やかなカーマインレッドは暗い場所でも見つけやすい。細部まで徹底的にデザインされているのに、「デザイン」の存在を忘れてしまうほどの自然さがある。バルブハンドルをデザインすると、最終的には誰もがこの形に行き着いてしまうのではないかと思えるほど必然的で、形に無駄がない。1980年の発売以来、半世紀近く愛され続け、累計販売数は1億個を超える。企業の製品ラインアップの1つでありながら、その企業のビジョンを象徴する存在となっている。毎日の暮らしや産業を支え続ける、ロングライフデザイン賞にふさわしいデザインのお手本である。
グッドデザイン賞
柳宗理氏がデザインし、1980年に発売された菊ハンドルは、父である柳宗悦氏が唱えた「用の美」の思想を受け継ぎ、工業製品として具現化した代表作の1つといえる。指に掛かる丸い突起は、滑りにくく確実に回せる操作性から導かれ、その必然的な形が菊を思わせる美しさを生み出している。誕生から半世紀近くを経ても基本形を変えることなく、現在も企業ブランドを象徴する形として使われている事実は、流行ではなく「用」から生まれた形の普遍性を物語っている。思想、機能、造形、ブランドが1つにつながり、時代を超えて生き続けるその姿を、工業デザインにおける「用の美」の到達点の1つとして、深い敬意をもって高く評価した。
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