日本デザイン振興会は「2021年度グッドデザイン賞大賞」記者発表会を開催し、最終プレゼンテーション審査に臨んだグッドデザイン大賞候補5件の中から「2021年度グッドデザイン大賞」(1件)を発表した。
日本デザイン振興会は2021年11月2日、「2021年度グッドデザイン賞大賞」記者発表会を開催し、最終プレゼンテーション審査に臨んだグッドデザイン大賞候補5件の中から「2021年度グッドデザイン大賞」(1件)を発表した。
同日行われた最終プレゼンテーション審査を経て、グッドデザイン賞審査委員および「2021年度グッドデザイン賞」受賞者の投票、ならびに事前に受け付けていた一般からの投票を加えた結果、オリィ研究所の「遠隔勤務来店が可能な『分身ロボットカフェDAWN ver.β』と分身ロボットOriHime」が得票数5197票を獲得し、2021年度グッドデザイン大賞に決定した。
2021年度グッドデザイン賞は、応募総数が過去最多となる5835件を記録し、同じく過去最多の1608件が2021年度グッドデザイン賞を受賞した。そのうち、独自性、提案性、審美性、完成度などの面において、特に優れたもの100件に贈られる「グッドデザイン・ベスト100」が選出され、さらにその中から特別賞として「グッドデザイン金賞」(20件)、「グッドフォーカス賞」(12件)が選ばれた。
そして、グッドデザイン金賞(20件)のうち、グッドデザイン大賞候補として選ばれた、以下5件が2021年度グッドデザイン大賞の座をかけて最終プレゼンテーション審査に臨んだ。
2021年度グッドデザイン大賞に選ばれたオリィ研究所の「遠隔勤務来店が可能な『分身ロボットカフェDAWN ver.β』と分身ロボットOriHime」は、遠隔操作デバイスである分身ロボット「OriHime」の開発と、ロボットを活用した「分身ロボットカフェ」の取り組みである。2018年に初めて実施され、これまで3回のアップデートを重ね、2021年6月に常設実験店(東京・日本橋)をオープンした。
重度の障害や難病を抱えた外出困難者が、自宅などから分身ロボットを遠隔操作し、スタッフとしてカフェで実際に接客業務に携わることができる。「動けないが働きたい」という意欲のある外出困難者の働く場としてだけでなく、企業との採用マッチングの場や社会経験の少ない障害者の就業訓練の場としても機能する。
オリィ研究所 代表取締役 CEOの吉藤健太朗氏は「学校も街も職場も、この世の中のほとんどは身体が動くことを前提にデザインされている」と指摘し、自身が過去病気によってほとんど学校に通うことができず、多くの機会を得ることができなかった経験から「もう1つの身体はないものか」と考えるようになったという。そして、自分自身よりもはるかに重い病気や重度の障害を抱えている人、さらには健康寿命を過ぎた高齢者など、社会に出たくても身体の制約などから参加できない人たちにも、社会とつながる選択肢を提供したいと考え、「OriHimeの研究に取り組み、『寝たきりの先輩』と呼んでいる重度の障害があり外出困難な約70人の仲間とともに分身ロボットカフェを展開するに至った」(吉藤氏)と取り組みの経緯を説明する。
グッドデザイン賞審査委員は、分身ロボットの開発を中心に、テクノロジーおよびUX(ユーザー体験)により就労希望者の障害を取り除く画期的な事業である点や、ロボットに接客されるのではなく、その奥にいる人に接客されている体感が持てるようデザインされている点などを評価ポイントとして挙げる。
2021年度グッドデザイン大賞の受賞コメントとして、吉藤氏は「この研究をさらに広げていき、身体が動かなくとも自分の意思で、いつまでも会いたい人に会えて、行きたいところに行けて、社会に参加し続けることができる未来、寝たきりの先に憧れを持つことができる社会を作っていきたい。また、今回の受賞を機に、日本国内だけでなく他の国に対しても、こういった働き方、社会への参加方法があるということを提案していけたらと思う」と展望を述べた。
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