「何を使うか」から「何を解決するか」へ、Autodeskが描くAI時代の設計/製造:Autodesk University 2026(2/3 ページ)

» 2026年10月08日 07時00分 公開
[八木沢篤,MONOist]

「何が変わったか」だけでなく「なぜ判断したか」を理解する

 続いて登壇した、Autodesk プラットフォームサービス&エマージングテクノロジー担当エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高技術責任者(CTO)のラジ・アラス(Raji Arasu)氏は、Autodesk Assistantの能力を拡張し、将来の働き方を支える技術と考え方を説明した。

Autodesk プラットフォームサービス&エマージングテクノロジー担当エグゼクティブバイスプレジデント 兼 CTOのラジ・アラス氏 Autodesk プラットフォームサービス&エマージングテクノロジー担当エグゼクティブバイスプレジデント 兼 CTOのラジ・アラス氏

 アラス氏は「現実世界の設計や製造では、『おそらく正しい』という判断では不十分だ」と強調する。Autodeskは、40年以上にわたって蓄積してきた業界の専門知識と、クラウド、AI研究、機械学習などへの投資を組み合わせ、何が起きているかだけでなく、その理由と次に取るべき行動まで把握する、プロジェクトインテリジェンスの実現を目指している。Autodesk Assistantはこの基盤上に構築され、重要な意思決定が行われる業務の中で、ユーザーとともに働くよう設計されているという。

 Autodeskは、広く普及している同社の主要製品にAutodesk Assistantを提供してきた。アラス氏によると、「2026年3月以降、Autodesk Assistantを用いた200万件の対話が行われ、成功率は99.9%に達した」とのことだ。

 利用者からは「設計時間が半減した」「情報の検索に費やす時間が減り、実際の問題解決により多くの時間を割けるようになった」との声が寄せられているという。同社はAutodesk Assistantの提供開始以降、利用者の声を踏まえ、品質と使い勝手を継続的に改善してきた。

 一方、アラス氏は、企業から寄せられる疑問として、「回答は正確で、自社のデータに根差し、行動につながるのか」「自社のAIをAutodesk Assistantと接続できるのか」「速度や精度、費用対効果を保ちながら、AIの活用を広げられるのか」の3点を挙げる。それぞれに対応する機能として紹介したのが、「Autodesk Context」「Autodesk Assistant Builder」「Autodesk AI Orchestrator」だ。

 最初の疑問に応えるAutodesk Contextは、プロンプトや分断された単一のデータソースだけに頼らず、ワークフロー、プロジェクト、日々の意思決定を深く理解することで、AIの回答をより正確で、次の行動に役立つものにする機能である。単に何が変更されたかだけでなく、なぜその判断に至ったのかを捉えるという。

 アラス氏は、プロジェクト終了から半年後に「なぜあの部品を交換したのか」と尋ねられる場面を例に挙げた。変更履歴は残っていても、判断の理由が担当者の記憶にしかなかったり、複数のシステムに散在していたりすると、その背景をすぐに確認するのは難しい。

 Autodesk Contextは、こうした判断の背景に加え、「いつ」という情報も扱う。ここでいう「いつ」は単なる時刻ではなく、判断が行われた時点の状況、制約、データ、関係者を含むワークフローの状態だ。

「Autodesk Context」は判断の背景だけでなく、時刻、状況、制約、データ、関係者を含むワークフローの状態を扱う 「Autodesk Context」は判断の背景だけでなく、時刻、状況、制約、データ、関係者を含むワークフローの状態を扱う[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 判断の理由と、その時点の状況を結び付けることで、プロジェクト内の情報、人、意思決定、活動の関係を捉える基盤となる。これを支えるのが、個々の要素や関係、プロジェクトの記録を扱う、粒度の細かいデータモデルである。

 汎用(はんよう)言語モデルが確認すべき事項を示すのに対し、Autodesk Assistantはこうした背景情報を使い、何が変わったのか、何に影響するのか、誰が対応する必要があるのか、その理由は何かを追跡する。アラス氏は「検索や手戻りを減らし、次の行動により大きな確信を持てるようにする」と説明した。

自社のAIを接続し、仕事に適したモデルを使い分ける

 当然ながら、企業の業務に関する情報はAutodeskの製品内だけで完結せず、社内の別のツールやパートナーにも存在する。また、企業自身がそれらを基にAIを構築しているケースもあり、自社のAIとAutodesk Assistantをどう連携させるかが次の課題となる。

 Autodeskは、顧客固有のワークフローを拡張できる、オープンなソリューションを重視してきた。この考えをエージェント型AIにも適用する仕組みとして紹介したのが、Autodesk Assistant Builderだ。

顧客、パートナー、Autodesk AIを1つのアシスタント内で連携させる「Autodesk Assistant Builder」 顧客、パートナー、Autodesk AIを1つのアシスタント内で連携させる「Autodesk Assistant Builder」[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 顧客自身やパートナーが構築したAIエージェントをAutodesk Assistantにつなぎ、顧客、パートナー、Autodesk AIを1つのアシスタント内で連携させる。各社が持つ情報や専門性を組み合わせ、業務を支援する考えである。

 もう1つの課題が、速度や精度、費用対効果を保ちながら、AIの活用を広げることだ。AIモデルを取り巻く状況は日々変化し、新たな選択肢や機能が相次いで登場している。アラス氏は「設計/製造の領域では文章だけでなく、形状、スケジュール、材料、シミュレーションなどを扱うため、あらゆる仕事に最適な単一のAIモデルは存在しない」と指摘した。

 そのため、速度、精度、コスト、業界固有の知識などを考慮し、業務内容に適したモデルを使い分ける必要がある。この課題に対応するのが、Autodesk AI Orchestratorだ。同社が設計やエンジニアリング向けに構築したモデルや、外部の最先端AIモデルを継続的に評価し、業務に適したモデルへ処理を振り分ける。精度、速度、セキュリティ、コストなどを検証した上で、ワークフローに応じて1つ、あるいは複数のモデルを活用する仕組みである。

業務内容に適したAIモデルを選択し、処理を振り分ける「Autodesk AI Orchestrator」 業務内容に適したAIモデルを選択し、処理を振り分ける「Autodesk AI Orchestrator」[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 モデルの評価やワークフローごとの比較検証はAutodeskが担い、利用者側の負担を軽減するという。業務やプロジェクトの理解、外部AIとの接続、適切なモデルの選択を通じて、検索や情報のつなぎ合わせ、AIを利用する際の複雑さを減らす。これにより、創造や問題解決、イノベーションに使える時間を増やす考えだ。

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