「何を使うか」から「何を解決するか」へ、Autodeskが描くAI時代の設計/製造:Autodesk University 2026(3/3 ページ)

» 2026年10月08日 07時00分 公開
[八木沢篤,MONOist]
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次世代Autodesk Assistantが示す、課題解決から始まる働き方

 再び登壇したアナグノスト氏は、直前に紹介された技術と、Autodeskが業界および技術分野で培ってきた専門知識が、プロジェクトインテリジェンスの実現を支えていると説明した。その上で、今後登場予定の「次世代Autodesk Assistant」の方向性を示した。

 次世代Autodesk Assistantでは、単一の製品内にとどまらず、製品を横断して利用できる独立した仕組みを目指すという。AIエージェントとの対話を起点に業務を進める“エージェントファースト”の働き方だ。「現在、各製品内で提供されているAutodesk Assistantや、利用者が日常的に使用しているツール、インタフェースを置き換えるものではなく、必要な場面で選べる新たな選択肢となる」(アナグノスト氏)という。

 アナグノスト氏は、このような仕組みの大きな可能性として、製品だけでなく、組織の境界も越えられる点を挙げる。プロジェクトを取り巻くエコシステム全体で専門領域間の連携を支え、プロジェクトに必要なリソースを減らしながら、より多くの仕事に対応できるようにする考えだ。

 ライブデモでは、複合用途施設に対する顧客からの設計変更を題材に、次世代Autodesk Assistantがもたらす将来の働き方を紹介。プロジェクトマネジャーが変更の影響を把握し、建築設計者が建物の設計を見直し、設計エンジニアが必要な部材を設計するという、専門領域の異なる3人の作業をつないでいく流れを示した。

 次世代Autodesk Assistantを構成する機能の1つが、複数のプロジェクトを横断して、優先して対応すべき課題やインサイトを提示する「Personal Pulse」である。デモでは、プロジェクトマネジャーの画面に、Autodesk Assistantが抽出して整理した重要項目が表示された。その中には、「建物の南側の壁を3フィート外側へ移動し、賃貸可能面積を増やしたい」という顧客からの変更要求も含まれている。

 プロジェクトマネジャーは、この要求を、特定の課題についてチームとAIエージェントが共同で作業する「Assistant Spaces」で開き、スケジュールと後工程への影響を音声で尋ねた。Autodesk Assistantがプロジェクトの状況や背景情報を分析し、注意すべき工程を示すガントチャートを生成すると、室内レイアウトの完成が期限に間に合わない可能性が浮かび上がった。そこで、プロジェクトマネジャーは対応を建築設計者へ割り当てた。

 引き継いだ建築設計者は、Autodesk Assistantに指示し、変更後の建物形状に合わせた住戸レイアウト案を生成させた。ここでは、Autodesk Assistantが建物形状の生成に特化した業界基盤モデルを活用しており、設計の出発点を短時間で得られることを示している。

 続いて、建築設計者は、顧客が求めるルーバー状のファサード(建物の外観)を検討した。Autodesk Assistant Builderで事前に作成したワークフローを呼び出すよう指示すると、Autodesk Assistantが顧客の示した画像から寸法を読み取り、ワークフローの入力値として適用する。建築設計者が板状の部材(スラット)の配置密度などを調整して実行すると、Autodesk Assistantがファサードの形状を生成した。

次世代Autodesk Assistantのライブデモ。ファサードの形状を生成 次世代Autodesk Assistantのライブデモ。ファサードの形状を生成[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 ファサードの検討が進むと、必要なブラケットの一部を個別に設計する作業へと移った。建築設計者は、Assistant Spacesを通じて画像や仕様を設計エンジニアと共有し、カスタムブラケットの設計を依頼。その情報を基に設計エンジニアが過去の設計を探すよう指示すると、Autodesk AssistantはFusionで作成したデータから類似するブラケットを提示した。

 設計エンジニアは、その中から90度ブラケットを選び、共有された要求事項に基づいて、該当するパラメーターを適用するようAutodesk Assistantに依頼した。Autodesk Assistantが寸法を適用し、Fusionが裏側で処理を担うことで、3Dモデルが自動的に更新され、必要な形状とコンフィギュレーションが生成される。過去の設計を探すところから、今回の要件に合わせて変更するところまでをつなぎ、一からモデルを作り直す負担を減らす使い方だ。

 さらに、設計エンジニアは、共有された画像を基に外装部材の3Dモデルを生成するようAutodesk Assistantに指示した。Autodesk Assistantは業界基盤モデルを用いて4案を生成。設計エンジニアは、その中から試作を始めるための案を選んだ。

 最後に、設計エンジニアがそれまでの作業結果をまとめるよう依頼すると、Autodesk AssistantがFusionのネイティブ設計データと図面を成果物として提示。このライブデモでは、Autodesk AssistantがプロジェクトデータとAIエージェントをまとめ、製品や専門領域を横断して一連の作業を支える様子を示した。

 アナグノスト氏は「現場の担当者たちが集中していたのは、どの製品や機能を使うかではなく、解決すべき問題だった」と説明する。作業に必要な画面やツール、機能が利用者へ提示され、一部の処理には、AIエージェントが呼び出して実行できるマイクロサービスを活用する仕組みだ。

 これにより、利用者は求める成果に集中できるという。アナグノスト氏は、1つの対話の中で複数分野にまたがる作業を進め、数週間ではなく数分で成果に到達できる可能性を示した。

 Autodesk Assistantは現在、Fusion、Forma、Flowを含む多くのAutodesk製品で提供されている。一方、製品、プロジェクト、チームを横断する、今回紹介された次世代Autodesk Assistantの仕組みは、AU 2026の時点ではプレビュー段階にあり、まだ一般提供には至っていない。

 同社は、単独でも利用できる仕組みを含め、次世代Autodesk Assistantの機能を2027年から展開する計画だ。具体的な提供開始時期、展開スケジュール、サブスクリプション条件、提供地域などの詳細についても、同年に発表するとしている。

AIを試し、人が価値を発揮する仕事を考える

 講演の締めくくりで、アナグノスト氏は「AIが人の役割や業界を変えつつある中、まずは実際に試し、何ができて、何ができないのかを理解することが重要だ」と述べた。

 AIの進化に伴って仕事の進め方も変わるため、変化に適応し、自分がどこで最大の価値を発揮できるのかを考え直す必要がある。次世代Autodesk Assistantは、プロジェクトの各段階で解決すべき問題と、そのための機能を提示し、人が専門知識や創造性を問題解決に注げるようにするものだという。

 最後に、アナグノスト氏は「Autodeskが構築するのは、デザインと創造の現実に根差したソリューションであり、プロンプトだけでなく、プロジェクトを理解するAIだ。その中核にあるのは、データとコンテキストに基づき、全く新しい体験によって支えられるプロジェクトインテリジェンスである。皆さん一人一人が、重要なものを設計し、作るためのキャパシティーをさらに広げるには、こうした仕組みが重要だ」と訴えた。

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