メカトロ機器を素早く動かしたい! LMガイドの剛性をCAEでどう再現する?:冴えない機械の救いかた(13)(2/2 ページ)

» 2026年09月28日 07時00分 公開
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解析モデルを実験で検証しよう

 では、この解析モデルを実験で検証しましょう。図6が実験装置と測定データの一例です。

実験装置と測定データの一例 図6 実験装置と測定データの一例(参考文献[1])[クリックで拡大]

 前回の図23の方法でもよかったのですが、今度は加速度センサーを取り付けて、プラスチックハンマーでたたいて固有振動数を求めました。

 回転系の固有角振動数は「回転ばね定数÷慣性モーメント」の平方根(ルート)で求められますが、今回は図3のモデルを使って有限要素法のモーダル解析で振動数を求めました。図7にシミュレーションモデルと計算結果の一例を示します。

シミュレーションモデルと計算結果の一例 図7 シミュレーションモデルと計算結果の一例(参考文献[1])[クリックで拡大]

 図8に固有振動数の計算値と実験値の比較を示します。横軸はモーダル解析による計算値、縦軸は測定値です。両者の固有振動数は一致しており、図3のモデルと式1、式11が妥当であることが分かります。

 図8のプロットが4個以上あるのは、LMブロックの位置をいろいろ変えて測定したデータだからです。AB群とCD群にプロットが分かれる理由は、前回の図24で述べました。固有振動数はばね定数の平方根に比例するため、AB群とCD群では固有振動数が1桁異なることになります。

固有振動数の計算値と実験値の比較 図8 固有振動数の計算値と実験値の比較(参考文献[1])[クリックで拡大]

1軸テーブル全体をシミュレーションしよう

 では、1軸テーブル全体のシミュレーションに進みましょう。図9に1軸テーブルの実験機を、動画1に有限要素法によるモーダル解析結果を示します。ここでは両者の固有振動数を比較しました。

 「実験機の固有振動数をどうやって測定するのだろうか?」と疑問に感じた読者もいるかと思います。見た感じ、ハンマリングでは満足のいくデータは得られそうにありません。

 そこで、今回はサーボモーターのフィードバック系のゲインを大きくし、フィードバック系を発振状態にして振動数を測定しました。少々危なっかしい実験ですね。固有振動数に関しては、ピタリ一致とまではいかず、かなり近い値となりました。

 「シミュレーションでボールねじとボールナットの関係はどうするの?」という疑問を持たれるかもしれませんが、ボールねじの回転角とボールナットの軸方向変位を結び付ける式を剛性マトリクスに追加しております。追加するといっても、筆者がソフトそのものをいじるわけではなく、「拘束方程式」と呼ばれるものを定義しました。今のソフトでは簡単にモデリングできるようになっていますね。

1軸テーブルの実験機と有限要素法モデル 図9 1軸テーブルの実験機と有限要素法モデル(参考文献[1])[クリックで拡大]
動画1 有限要素法解析結果(参考文献[1])

 シミュレーションのためには、LMガイドのばね定数の他に以下のばね定数も必要になります。

  • ベアリングのスラスト方向の剛性
  • ボールねじのねじり/曲げ剛性(これはビーム要素を使えば済む)
  • ボールねじの軸方向剛性(これもビーム要素を使えば済む)
  • ボールナットの軸方向剛性
  • LMガイドの水平荷重剛性(ホリゾンタル荷重)
  • LMガイドの回転剛性(ヨーイングモーメント)

 部品メーカーに問い合わせれば入手できるデータもありましたが、入手できないものは治具を作ってばね定数を測定しました。ベアリング、ボールねじ、LMガイドは全て予圧品です。

 シミュレーション結果のアニメーション表示を見ると、LMガイドの変形の他に、ボールねじ本体のねじれやベアリングのスラスト方向の変位も無視できない量であることが分かります。

 この作業は実験室レベルの1軸テーブルにとどまらず、客先に納めるXYテーブルにも適用し、作る前にシミュレーションで振動変位を予測して、それが許容値以下になるまで設計変更を繰り返しました。



 次回は、超音波溶接機のボルト破断事例を紹介します。 (次回へ続く)

参考文献:

  • [1]高橋良一|メカトロ機器で使用される機構要素部品の有限要素法モデル|日本機械学会(2006年年次大会)

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Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表

1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ


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