須毛原氏は、これらの個別企業という「点」を、大学ネットワークという「線」でつなぎ、さらに地域クラスターという「面」で捉える視点を示した。
先に紹介した企業をそのルーツから見ると、大学や人材の系譜が浮かび上がる。例えば北京では、Galbot、Robot Era、Galaxea AIはいずれも清華大学とのつながりを持つ。一方、杭州では、DEEP Roboticsが浙江大学、Westlake Roboticsが西湖大学を起点としている。
さらに、フィジカルAI関連企業は北京、上海、蘇州、杭州、深センの5地域に集積しており、それぞれ異なる役割を担っているという。
須毛原氏は、北京を清華大学や北京大学、中国科学院などが集まる「学術の首都」、上海を外資やVCが集まる「国際の窓口」、蘇州を精密製造/部品企業が集まる「精密部品の拠点」、杭州をスタートアップが育つ「起業のエンジン」、深センをEV工場などへの実装やハードウェア生産を支える「量産の拠点」と整理した。
中でも、須毛原氏が注目するのが杭州だ。浙江大学や西湖大学といった学術基盤に加え、Alibabaを中心としたエコシステムがあり、出資などを通じてスタートアップを支える環境も形成されている。
実際、UnitreeやDEEP Robotics、Westlake Roboticsなど、フィジカルAIの有力企業が杭州に集積している。須毛原氏は、こうした大学、企業、資本が結び付く環境を踏まえ、杭州について「中国のフィジカルAIの聖地と言っていいのではないか」と評した。
セミナーの後半で須毛原氏は、中国の強みを踏まえつつ、日本企業がどこで価値を出せるのかという方向性も示した。中国側の部品やサプライチェーンを活用しながら、「大脳」に当たるAIやデータ、セキュリティなどを日本側で担うという考え方だ。
日本企業の勝ち筋については、セミナー最後のQ&Aでも議論された。
「大脳」で勝負する一方、ハードウェアを諦めてよいのかという質問に対し、須毛原氏は、ハードウェアを諦める必要はなく、「組み合わせ」が重要だと回答した。中国で生まれた性能の高い部品などを、経済安全保障に配慮しながら活用し、日本側の技術などと組み合わせていく方向性を示し、「日本が勝てる可能性はまだまだ大きい」と述べた。
須毛原氏が強調したのは、「現実を知る」ということだ。中国のフィジカルAIを巡る報道では、その進展を伝えながらも、実用性への疑問などに焦点が当たるケースも見られるという。一方で、須毛原氏は今回の中国訪問で300体近くのロボットを目にし、世界中から集まった人々の表情や発言にも接したことから、日本企業も中国フィジカルAIの現状を実際に見て、感じるべきだと痛感したという。
こうした実体験を踏まえ、須毛原氏は目を引くニュースや断片的な情報にとらわれず、中国フィジカルAIの現状を正しく捉えるためにも、「現実を知る」ことが重要だとした。
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