そして、2026年から両社がPhase2として連携をさらに深めるために共同実証を決めたのが二輪安全運転診断アプリである。ホンダは2023年から、四輪車のドライバーの運転診断を行うスマートフォン向けアプリ「Honda Driver Coaching」を北米で提供している。もともとは予防安全システムであるHonda Sensingと連動するものだったが、米国における若者の死亡事故のうち3分の2が中古車で発生していることが分かり、適用範囲を拡大するためにスマートフォン向けアプリ化した。
二輪安全運転診断アプリは四輪車向けアプリがベースになっており、スマートフォンの加速度センサーで加速と減速、ジャイロで車両の傾きなどを検知して、運転行動を分析/診断する。ただし、四輪車とは運転特性が全く異なることから、二輪車向けのロジックは新たに開発している。例えば、二輪車は右左折する際に車両を傾けるなど、四輪車に比べて姿勢変更がはるかに大きい。スマートフォン自体に加わる振動も大きくなるので、その影響を加味したロジックが必要になる。
今回のアプリは、iOSやAndroidといったスマートフォンの機種の違いがあっても同様の運転診断が可能である。また、ホルダーへの装着を前提としておらず、スクーターのインナーラックや運転手の衣服のポケット、配達用リュックの中などでスマートフォンを携行していても運転診断に対応できる。「国内で販売されているさまざまなスマートフォンを用いるとともに、スマートフォンの携行位置が違っても運転診断できるように最適化を重ねた」(ホンダ 安全運転普及本部 交通安全ソリューション課 アシスタントチーフエンジニアの川渕貴之氏)という。
その上で、ホンダ交通教育センターのプロインストラクターの安全運転判断や開発テストライダーの実走行データから、二輪車の安全な走行における「暗黙知」を定量化することで運転診断の精度を向上した。また、四輪車向けアプリと同様に運転診断ロジックをシンプル化することで、リアルタイムに音声フィードバックを行いその場で“気付き”を提供できるようにしている。
ホンダのパートナーであるUberは、配車サービスのモビリティ事業と配達サービスのデリバリー事業を展開しており、両事業とも交通安全との関わりは深い。このうちデリバリー事業に対応するUber Eatsは、世界1万5000以上の都市で利用でき、配達パートナー向けのアプリの対応言語は約50に上る。月間のアクティブドライバー/配達パートナーは世界で1000万人以上にもなる。
Uber Japan セーフティ部 部長の尾竹森氏は「日本国内にはUber Eatsの配達パートナーが12万人以上いる。配達車両としては自転車のイメージが強いかもしれないが、二輪車の利用は日本国内と世界の両方で拡大しており、その安全確保に向けた取り組みはプラットフォーマーとして責任が大きくなっている」と述べる。
Uberは、ホンダと同じくFIA Road Safety Indexで最高ランクの3スターを獲得するなど交通安全の取り組みに注力してきた。2026年8月からは、配達パートナーのGPS情報から速度超過を検知し、警告する機能を日本国内向けのアプリに導入した。速度超過が繰り返されると、アプリへのアクセスを制限した上でホンダと連携に基づく安全運転講習の受講を要請するという対応も行っている。
また、安全用品メーカーと連携した保護具装着に向けた啓発活動も強化している。自転車向けでは、AIによるヘルメット着用確認機能も提供している。
今回の二輪安全運転診断アプリは、二輪車を利用するUber Eatsの配達パートナー1500人の希望者を対象に行う。実施期間は2026年9月1〜28日で、達成報酬は同アプリをオンにした状態で合計150km以上の走行距離を記録した場合に5000円を支給する。また、達成報酬対象者のうち、期間中の平均運転スコアが上位10人に入った場合には、追加で1万5000円を支給する。
なお、今回の共同実証に用いるアプリは、ホンダの開発版とは異なりリアルタイムの音声フィードバックや地点アドバイスなどの機能は提供されず、運転診断とスコア閲覧のみのシンプルなユーザーインタフェースとなっている。これは、配達パートナーには配達作業に集中してもらうためだという。


共同実証に使用する「二輪安全運転診断アプリ」の画面。ホンダが開発したアプリと比べてシンプルなユーザーインタフェースになっているものの、ブレーキ、アクセル、ステアリング操作のそれぞれでスコア化されていることに変わりはない[クリックで拡大] 出所:ホンダホンダは、今回の共同実証結果を基に二輪安全運転診断アプリのさらなるブラッシュアップを図る。ただし、現時点で一般ユーザー向けに展開する時期は明らかにしていない。
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