今回の開発成果は2つある。1つは構造化電波を安定して生成する基盤技術で、もう1つは宇宙から地上へ必要な強度で構造化電波を届けるための宇宙用アンテナ構成である。
日立は2025年8月、構造化電波の原理検証として、音波を用いて物体の形状/動きといった複数の特徴を取得できる可能性を確認していた。今回は、電波暗室と地上屋外で実際に電波を用いて構造化電波の基礎技術を検証。円形アレイアンテナを構成する複数のアンテナ素子の位相を制御し、構造化電波の特徴を持つ渦状の位相構造を安定して生成できることを確認した。
この安定生成できる構造化電波を基に、宇宙から地上へ必要な強度で照射するための宇宙用アンテナ構成も開発した。放物面反射鏡の一部を主軸からずらして用いる反射型アンテナであるオフセットパラボラアンテナで円形アレイアンテナからの構造化電波を反射させることで、円形アレイアンテナのみを用いた方式と比べて、波面構造を維持したままビーム発散角を低減し、高い指向性で放射できることを確認した。電磁界シミュレーションによる解析では、ビーム発散角を円形アレイアンテナのみの29度から約5分の1となる6度に低減できており、電波暗室内での実験でも約6度となる同様の結果が得られたという。
直近10年の事業展開ロードマップでは5つのフェーズに分けて、構造化電波技術を搭載した衛星地球観測事業の本格展開を目指している。今回発表した成果は第1フェーズの基礎技術検証に当たり、2028年には航空機を用いたPoC(概念実証)を行う第2フェーズを予定している。その後、第3フェーズとして2030年ごろに航空機での商用データサービスを開始し、第4フェーズとして2033年ごろに構造化電波技術を搭載した衛星の打ち上げを想定する。最後の第5フェーズで、2035年ごろにこの衛星を用いた地球観測事業を始める計画である。
構造化電波技術を搭載した衛星による事業構想としては、収集した3次元の観測データをデジタルソリューション群「Lumada」のデータベースとして活用し、フィジカルAI(人工知能)モデルである「IWIM」と組み合わせた解析を行えるようにする。そして、この解析結果を基に社会インフラの補修時期の予兆診断サービスを次世代ソリューション群「HMAX」として展開することを見据える。
また、高さ方向の情報を有する3次元観測データにとどまらず、電波の周波数帯域をXバンド(8G〜12GHz)、Cバンド(4G〜8GHz)、Lバンド(1G〜2GHz)などで使い分け、大気層、地上層、地形層など観測対象を独立したレイヤーで分離/抽出して3D化する高度な解析を行うことも視野に入れている。「日立グループで鉄道を手掛ける日立レールからは、鉄路の予兆保全に有効な技術として検討してもらっている」(渡辺氏)という。
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