日立が25年ぶりの宇宙事業再参入へ、「構造化電波」で衛星地球観測を革新宇宙開発(1/2 ページ)

日立製作所が研究開発グループ傘下の宇宙プロジェクトの開発成果第1弾となる「構造化電波技術」について説明。現行の観測衛星に搭載されている光学カメラやSAR(合成開口レーダー)の画像が基本的に2次元なのに対し、構造化電波を用いることで3次元画像を取得できるようになる。

» 2026年09月03日 06時15分 公開
[朴尚洙MONOist]

 日立製作所(以下、日立)は2026年9月2日、東京都内で会見を開き、研究開発グループ傘下の宇宙プロジェクトの開発成果第1弾となる「構造化電波技術」について説明した。現行の観測衛星に搭載されている光学カメラやSAR(合成開口レーダー)の画像が基本的に2次元なのに対し、構造化電波を用いることで3次元画像を取得できるようになる。既に、電波暗室や地上屋外における静的な基礎技術検証を完了しており、2028年には航空機を用いた動的な実証実験に移行する計画だ。将来的には、2035年ごろに構造化電波技術を搭載した衛星による地球観測事業を始めたい考えだ。

構造化電波技術を搭載した衛星のミニチュアモデル構造化電波技術を搭載した衛星のミニチュアモデル 構造化電波技術を搭載した衛星のミニチュアモデル。スケールは7分の1で、実寸のパラボラアンテナは直径1mになるという[クリックで拡大]
日立の渡辺康一氏 日立の渡辺康一氏

 日立 研究開発グループ NextResearch プロジェクトリーダの渡辺康一氏は「日立は2001年に宇宙機器事業からは撤退している。しかし、研究開発グループで2030年からバックキャストしてテーマを選定する際に宇宙関連が候補に挙がり、今回の宇宙プロジェクトを立ち上げることになった。現在の日立としてはIoT(モノのインターネット)データで勝っていくという方針があり、革新的かつ日立でしかできないようなデータを取るという方向でこの構造化電波の研究開発が始まった。他にも宇宙関連の研究開発テーマはあるが、今回は第1弾という位置付けになる」と語る。

 地球観測データ利活用市場は、2030年に7000億米ドル(約100兆円)の経済効果を生むという試算が出ている。特に、自然災害やインフラリスクを事前に検出し損害を低減する効果は大きい。国連防災機関は、災害発生の24時間前に警告を出すことで損害を30%低減できるとしている。これを日本の災害復旧費に当てはめると、年平均1兆7300億円(2018〜2025年)のうち5180億円を低減できることになる。

地球観測データ利活用市場は2030年に7000億米ドルの経済効果を生む 地球観測データ利活用市場は2030年に7000億米ドルの経済効果を生む[クリックで拡大] 出所:日立

 また、自然災害リスクに加えて、日本国内で大きな課題になっている社会インフラの老朽化についても、不具合の予兆を検知できれば維持更新コストやサービス停止リスクを低減することにつなげられる。

構造化電波は3次元情報や物体の速度などを計測できる

 構造化電波とは、日立が独自に研究開発を進める観測用の電波である。SARの観測用電波として一般的に用いられている円偏波などの平面波は、電波照射軸に平行な方向の距離と、直行する方向の奥行きから成る2次元画像を取得できる。ただし、高さ方向に当たる3次元情報を計測できないため、3次元画像を取得できないことが課題だった。

構造化電波とは 構造化電波とは[クリックで拡大] 出所:日立
光学画像、従来のSAR画像、構造化電波を用いたSAR画像の比較。従来のSAR画像は、光学画像では難しい夜間や悪天候でも観測できるが、画像のひずみがある。構造化電波を用いると画像のひずみがなく、高さを判別できる[クリックで拡大] 出所:日立

 一方、構造化電波は、OAM(軌道角運動量)などの電波の自由度を持つ渦電波を独自手法で重ね合わせることで生成しており方位角検出能力を持つ。この方位角を用いることで、平面波では難しい3次元情報や物体の速度などを計測できるようになる。

円偏波と構造化電波に用いられている渦電波の比較 円偏波と構造化電波に用いられている渦電波の比較[クリックで拡大] 出所:日立

 ただし、構造化電波は、平面波と同じ円形アレイアンテナを用いて電波を放射すると、指向性が低いため広がりやすいことが課題だった。宇宙空間の衛星軌道から地上を観測するには、指向性を高めて十分な強度で電波を届ける必要がある。

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