国内最大級の500kW純水素燃料電池設備が平塚で稼働脱炭素(1/2 ページ)

田中貴金属工業は、湘南工場(神奈川県平塚市)で国内最大級となる出力500kWの純水素燃料電池発電設備「TANAKA H2 Nexus」を稼働させた。その特徴や機能とは……。

» 2026年07月10日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 田中貴金属工業は2026年7月8日、湘南燃料電池発電所(神奈川県平塚市)で「燃料電池発電設備 稼働開始記念式典」を開催し、同設備の特徴や効果などについて紹介した。

フォトセッション。左から、神奈川県 環境農政局 脱炭素戦略本部室 調査監(脱炭素戦略担当)の山口健太朗氏、川崎市 臨海部国際戦略本部 本部長の大山啓祐氏、平塚市長の落合克宏氏、田中貴金属グループ 代表取締役社長 執行役員の田中浩一朗氏、田中貴金属工業 代表取締役副社長 執行役員の多田智之氏、東芝 執行役員 エネルギーアグリゲーション事業部 バイスプレジデントの河原慈大氏

発電能力2000kWまで拡張可能

田中貴金属グループ 代表取締役社長 執行役員の田中浩一朗氏 田中貴金属グループ 代表取締役社長 執行役員の田中浩一朗氏 出所:田中貴金属

 田中貴金属グループ 代表取締役社長 執行役員の田中浩一朗氏は「本日、国内最大級となる発電能力500kWの純水素燃料電池発電設備が湘南工場(神奈川県平塚市)内で稼働の日を迎えられたことをうれしく思う。田中貴金属は、貴金属の可能性を追求し、より豊かな未来に貢献するという理念の下、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進めてきた。製造現場での省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用に加えて、燃料電池や水電解装置に不可欠な貴金属触媒など、水素社会を支える技術の開発、提供にも力を注いでいる」とあいさつした。

 続けて、「そして本日、自ら水素エネルギーを活用した燃料電池発電設備を稼働させることとした。これは水素社会を支える技術を提供するだけでなく、自らがその価値を実践し、社会へ発信していく新たな一歩であると考えている。世界的に脱炭素の取り組みが加速する中、水素エネルギーへの期待はますます高まっている。本設備が当社のカーボンニュートラルへの取り組みをさらに前進させるとともに、水素社会に向けた1つのモデルとなることを願っている」と補足した。

 同社は、次世代のエネルギー源として水素に着目し、純水素定置用として燃料電池「TANAKA H2 Nexus」を導入した。これにより、ベース電源の一部を自家発電で確保するとともに、水素利活用の推進やCO2排出量削減に向けた取り組みを進める。

 TANAKA H2 Nexusは、発電機の仕様が東芝製固体高分子(PEM)型の燃料電池発電設備で、現状の発電能力は500kWだが、2000kW(500kW×4ライン)まで拡張できる。開発面積は2445.35m2で、水素タンク貯蔵量は78kL(液化水素)となっており、水素使用量は約380Nm3/hで、耐震性は1.5(重要度係数、災害拠点相当)だ。

「TANAKA H2 Nexus」 「TANAKA H2 Nexus」[クリックで拡大] 出所:田中貴金属工業
田中貴金属工業 製造統括部 燃料電池発電設備プロジェクトの白岩剛氏 田中貴金属工業 製造統括部 燃料電池発電設備プロジェクトの白岩剛氏

 今回の設備は次世代のマイクログリッド化へ向けた施策の1つとしての実証設備だ。田中貴金属工業 製造統括部 燃料電池発電設備プロジェクトの白岩剛氏は「設備の特徴として、無燃焼形態であるため、燃料電池スタックは燃焼しない。そのため、CO2を排出せず、次世代のマイクログリッド化、地産地消型のエネルギー源として活用できるかを実証し、実運用していくという考えで製造されている。湘南燃料電池発電所の電気系統が停電したときに、非常用発電が行える『ブラックアウトスタート機能』を備えており、災害時の電力供給でも役立つ」とメリットを述べた。

純水素型定置用燃料電池発電設備創設にあたって 純水素型定置用燃料電池発電設備創設にあたって[クリックで拡大] 出所:田中貴金属工業

 同設備は500kWで稼働時に、2025年度における湘南工場の電気使用量の約34%を賄い、CO2排出量を約26%削減できる見込みだ。「発電能力500kWは一般家庭の約500世帯分に相当する。CO2削減効果は約12万5000本分の杉の木と同等だ」(白岩氏)。TANAKA H2 Nexusの総事業費は約26億円だという。

TANAKA H2 Nexusの概要 TANAKA H2 Nexusの概要[クリックで拡大] 出所:田中貴金属工業
TANAKA H2 Nexusのインパクト TANAKA H2 Nexusのインパクト[クリックで拡大] 出所:田中貴金属工業

 なお、TANAKA H2 Nexusの熱利用について、田中貴金属工業 代表取締役 副社長 執行役員の多田智之氏は「この燃料電池は発電すると電気と熱が出て、本来この熱を有効利用したいが、現在まだ有効利用のめどが立っていない。今、白岩を中心に、どうやったらその熱エネルギーを使いこなせるかというのを考えているところだ。TANAKA H2 Nexusで生じる湯の温度が60℃だが、この熱エネルギーをどう使っていくかを考えている」と話す。

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