シーメンスは、東京都内で生産/工作機械業界における製品開発の課題や将来展望について議論する「第12回 Japan Machinery Innovation Forum」を開催。同イベントで講演するために来日した、シーメンス デジタルインダストリーズソフトウェアのラフール・ガーグ氏に、産業機械とAI(人工知能)などを巡って話を聞いた。
シーメンスは2026年6月5日、東京都内で生産/工作機械業界における製品開発の課題や将来展望について議論する「第12回 Japan Machinery Innovation Forum」を開催。同イベントで講演するために来日した、シーメンス デジタルインダストリーズソフトウェア 産業機械担当 ストラテジー&マーケティング シニアバイスプレジデントのラフール・ガーグ氏に、産業機械とAI(人工知能)などを巡って話を聞いた。
MONOist 一般的なAIと産業用AIはどのように違うのでしょうか。
ガーグ氏 一般的なAIは、確率的なアプローチを取っている。日々の生活の中では、AIの出した答えが100%正しくなくても構わない。AIの回答は“まあ、これぐらいでいいだろう”というレベルになってしまう。同じ質問を何回か聞いているうちに、異なる答えが返ってくることもある。
一方、産業用AIについては、決定論的でなければならない。つまり、同じ質問を何回しても、同じ答えを返してこなければならない。もちろん、条件が変われば、回答も異なってくる。
MONOist 決定論的な答えが求められる産業用AIにおいて、AIの信頼性をどのように担保するのでしょうか。
ガーグ氏 産業用AIの信頼性を担保するため、シーメンスでは産業用基盤モデルの上にAIを構築する。ChatGPTのような一般的なAIはLLM(大規模言語モデル)がインターネット上の情報を読み込むが、産業用AIはわれわれの「Teamcenter」によって収集したデータを基に構築する。実際に工場の設計や設備の稼働状況、製品の品質など、100%信頼性のある工場のリアルなデータを基盤にする。
MONOist 改めて産業用AIが果たす役割を教えてください。
ガーグ氏 製造業は今、さまざまな複雑性への挑戦が求められている。市場や規制、関税、サプライチェーンや先進技術…… それらにどのように対応していくかが重要になっている。そしてAIの活用こそが、大きな競合他社との差別化要因となって、これらの複雑性を管理する手だてになっている。
その中で、産業用AIが果たす役割は主に3つあると考えている。
1つ目がエンジニアリングプロセスにおけるAI活用だ。AIはユーザー、つまりエンジニアの作業効率を高めることに使用される。属人化されていた知識、洞察を企業全体で共有し、例えば新人のエンジニアの能力を、ベテランのエンジニアのレベルまで引き上げ、新人とベテランのギャップを埋めることができる。AIが迅速にさまざまなアイデアを提示し、人間がその中から最適なものを取捨選択することで、意思決定のプロセスを高速化する。
2つ目が、工場におけるAI活用だ。生産工程の効率やスループットを高め、工場をよりインテリジェントにするために用いられる。例えば現在、各種生産条件の変化が起こると、それに基づいて工場のオペレーターが判断し、変更を行っている。それをAIが代わりに判断し、オペレーションを変更できるようになる。異常が発生した際に、より早い段階で問題を特定することもできる。
3つ目が、フィジカルAIとなる。これまでコンピュータの中だけで動いていたAIを、実際の製造装置やロボットの中に組み込んで活用する。
MONOist 現場の“技術者”に強みを持っていた日本の製造業は、どのようにデータ化のアプローチを進めればいいでしょうか。
ガーグ氏 人々の頭の中に存在している知見、技術は彼らが引退すれば失われてしまう。では、それらをどのようにAIが行動を起こせるデータにしていくのか。
何かを待っていてはだめだ。今すぐそれらのデータの収集を始める必要がある。これは一朝一夕にできるものではなく、間違いなく時間がかかるからだ。何かプログラムを書けば、人々の頭の中にあるものをコンピュータに移せるとか、そういうものではない。
各工程を見ながら、現場でオペレーターがどのように仕事をしているのか、データを収集しなければならない。待てば待つほど遅れはどんどん大きくなる。
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