「AIの奴隷にはならない」シーメンス幹部、産業用AIは製造現場の何を変えるかFAインタビュー(2/3 ページ)

» 2026年06月24日 07時00分 公開
[長沢正博MONOist]

「エンジニアリングにかかる時間が2〜5倍速くなる」

MONOist シーメンスは「ハノーバーメッセ 2026」で、AIがエンジニアリング業務を自律的に遂行する「Eigen Engineering Agent」を発表しました。ユーザーからはどのような反響が得られていますか。

ガーグ氏 とても好評だ。その大きな理由は、エンジニアリングにかかる時間を従来の2〜5倍速くすることができるからだ。

 Eigen Engineering Agentが提供する価値は大きく3つある。

 1つ目は要件を収集して、コードのアウトラインを生成できる。それをエンジニアが受け取って、コードを追加したり、修正したりできる。

 2つ目は企業におけるプログラミングを標準化する。Eigenによって同じスタイル、フォーマットでコードを生成することが可能だ。これは企業側で設定できるため、違う人が作っても同じようなプログラムになる。

 3つ目は、企業の中でプログラムの再利用を促進できる点だ。エンジニアが何かプログラムを作ろうとしたときに、まず確認から始めればいい。同じようなプログラムを書いた人がいないかをEigenに聞くと、保存されたデータの中から探してきてくれる。ゼロから始める必要がない。

MONOist Eigenは生成したコードの評価までできるのでしょうか。

ガーグ氏 それはまだできない。われわれが次に何を実現しようとしているのかというと、Eigenが生成したコードに人が手を加えた後、そのコードに対してEigenが評価を与えることだ。これは恐らく短期間のうちにできるようになるだろう。なぜなら今、多くのユーザーに使われており、ユーザーからさまざまなフィードバックをもらっている。

「奴隷になっているのではなく、AIの長所を活用している」

MONOist AIが進化していくにつれて、人々はAIの奴隷になってしまわないでしょうか。

都内で講演するガーグ氏 都内で講演するガーグ氏

ガーグ氏 今、私自身が何か新しいことをやろうとすると、どんなプロジェクトであってもまずはAIに助けてもらうところから始めている。

 私は、AIの奴隷になっているのではなく、AIに手伝ってもらっている、仕事のためにAIの長所を活用しているという風に考えている。AIを使うことで、自分がやろうとしている作業の効率が劇的に高まっているからだ。

 今回、来日して行った講演では、日本の製造業に関するスライドを示した。最初から私にそのような知見があったわけではない。AIに質問を投げかけながら構築し、自身の考えとして発展させていった。AIはこんな風に使うことができる。

 昔なら同じ作業をしようとしたら2〜3週間を費やしていただろう。今回は、AIによって3時間で作ることができた。

MONOist 経験の浅いエンジニアがAIを活用して作ったプログラムは、どのように評価すればいいでしょうか。

ガーグ氏 既に現状でも、バーチャルな環境でプログラムをテストできるソフトウェアが存在するし、シーメンスでも提供している。オペレーターはその検証結果を見て、果たしてこれは自分が求める機能を果たせているのかどうかを考えればいい。

 例えば、計算機が世の中に誕生して人類の数学の能力が落ちただろうか。AIがそういった能力を備えたからといって、人間のインテリジェンスが失われてしまうというわけではない。私はエンジニア時代、カシオの計算機を愛用していた。とても素晴らしい計算機だった。

「人がやらなければならないことはたくさんある」

MONOist シーメンスが考えるインテリジェントファクトリー、もしくはソフトウェアデファインドファクトリーの定義を教えてください。

ガーグ氏 ソフトウェアデファインドファクトリーというのは、よりソフトウェアを使って工場の制御を行う、つまり自動化を進めていくことだ。

 インテリジェントファクトリーでは、ソフトウェアが工場の動き方そのものを変えることができる。例えば、機械が故障したら担当のエンジニアに連絡するだけでなく、その機械が行っていた業務を別の機械に割り振るなどの判断もできる。

MONOist ソフトウェアは常に最新の状態に更新されますが、生産設備は少しずつ老朽化していきます。ここにギャップが生じないのでしょうか。

ガーグ氏 だからこそ、人がまだオペレーターとして必要になるのではないかと思う。そのギャップが小さくなってくれば、将来的に無人の自律型工場になるだろう。ただ、個人的な見方だが、それによって人々が仕事を失うということにはならない。なぜなら、世の中には、人がやらなければならないことがたくさんあるからだ。

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