脱アナログ管理で生産性25%向上、パナソニック流「自走する工場」の作り方製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)

» 2026年04月24日 06時00分 公開
[安藤照乃MONOist]
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MONOist AI機能はどのように役立っているのでしょうか。

野出氏 ダッシュボードを作成する側と見る側の双方にメリットをもたらしています。まず作成側の視点ですが、これまでは「今月のKPI(重要業績評価指標)」の数字を見る側に提示すると、必ずと言っていいほど「前月比や前年比でどう変化しているか?」「数字は上昇傾向にあるのか、下降傾向なのか?」という質問が返ってきました。導入当初は私1人でダッシュボードを作っていたため、そうしたあらゆる質問パターンを事前に網羅して作り込むのには、非常に時間がかかっていたのです。しかしAI機能の実装により、標準的なデータの比較はAIが自動で提示してくれるため、自分で細かく作り込む必要がなくなり、作成時間を削減できました。

 またデータを見る側も、Excelのように自由にフィルターをかけられるだけでなく、日本語で知りたいことを質問すれば、AIが意図をくみ取って回答やグラフを生成してくれます。BIツールに不慣れな現場のメンバーでもデータを簡単に確認できるようになりました。

生産性が25%向上、不良率低下で年間3800万円のコスト削減

MONOist 実際にデータが可視化されたことで、業務や生産性はどのように変わったのでしょうか。

野出氏 管理者(経営層)側では、これまで月1回だったKPI集計が週次や日次で可能になり、実績確認の時間的ロスがなくなって経営判断のスピードが向上しました。

 現場側では、不具合や生産遅延の原因追及にかかる作業負担が減りました。従来は、不良品が発生した際はエラー原因を探すために1日分の録画映像を最初から最後まで目視していましたが、今はツールで「異常が起きた時間帯」を特定し、その部分の映像を確認すればよくなりました。

ダッシュボードから録画へ遷移し、問題時間帯を確認 ダッシュボードから録画へ遷移し、問題時間帯を確認[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 映像分析による作業の無駄の排除と、部品詰まりなどの「チョコ停(設備の短時間停止)」を減らしたことで、「生産性指数(1時間に1人が組み立てられる台数)」が40から50へと約25%向上する成果につながっています。

生産性指数の確認 生産性指数の確認[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 また、手書きだった日報をデジタル化したことで、Excelへの転記やデータ集計の時間が不要になりました。その結果、他他拠点の八日市工場(滋賀県東近江市)では1工場当たり月186時間(年間約2200時間)もの作業時間削減を確認しています。

井上氏 会社全体としては、製造プロセスを継続的に改善できる仕組みが整ったことで、不良率が3.8%から1.1%へと大きく低減しました。これは、年間で約3800万円規模のコスト削減効果に相当すると試算しています。

野手氏 現在は社内で年6回ほど、ダッシュボードの作成や見方に関する勉強会を開催しています。その結果、「ツールを触るのが楽しい」と感じるメンバーや、自らダッシュボードを作成できる人材も少しずつ増えてきています。

他工場への横展開も、「自走できる工場づくり」への挑戦

MONOist 今後の全社的な展開や、次のステップについてお聞かせください。

野出氏 彦根工場としては、サプライチェーン全体をつなげた可視化に取り組みたいと考えています。現状で可視化しているのは製造工程のデータが中心ですが、今後はさらに上流の営業や生産管理、そして下流の部品調達部門のデータとも連携させる計画です。

 特に部品調達においては、「生産したいのに、部品の遅延情報がすぐに入ってこない」という課題がよく発生します。「今日の予定に対して部品が確実にあるか」「3日後の生産に必要な部品がそろうか」といったリスクを、即座に確認できる仕組みを作りたいですね。

 最終的には、誰もがExcelやPowerPointを当たり前に使うように、製造現場のほぼ全員がこうしたITツールを使いこなせる環境を作っていきたいです。一人一人がデータを見て自ら改善していける組織へと成長させることで、さらなる現場革新につなげていきます。

現場のデータドリブン経営が目指すものン 現場のデータドリブン経営が目指すもの[クリックで拡大] 出所:パナソニック

井上氏 全社で取り組んでいるデジタルデータ収集活用推進分科会の参加拠点は、立ち上げ当初の12拠点から現在は17拠点にまで広がっています。今回の彦根工場のような良い改善事例を、八日市や草津、山形など他の工場へもスピーディーに横展開し、全社的な取り組みを加速させたいと考えています。

 ツールの導入により、これまで「勘やコツ」に頼っていた部分がデータで可視化され、トップダウンだけでなく現場主導で改善アクションを起こせる土壌がかなり整ってきました。今後はこの仕組みを活用して製造原価の低減や効率化をさらに進めるとともに、各現場が自律して自走できる、変化に強い工場づくりを目指します。

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