MEMSデバイスの小型化と高信頼性の実現を後押しする新素材が誕生――東レは、従来樹脂の課題を克服し、高耐熱と低ストレスを両立した「感光性ポリイミド接合材」を開発した。
東レは2026年4月9日、半導体やディスプレイ向けの絶縁樹脂材料として事業を展開しているポリイミドコーティング剤(セミコファインおよびフォトニース)をベースに、半導体の微小なスケールで加工された機械的構造と電子回路が統合されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)向けの感光性ポリイミド接合材を開発したと発表した。
MEMSは、半導体の微細加工技術を用いて、電子回路と機械構造(可動部)を一体化した微小デバイスの総称だ。感光性ポリイミドは、光照射により現像液への溶解性が変化し、現像工程でパターン形成が可能なポリイミド材料を指す。
MEMS製品において中空構造は、「可動部を自由に動かすための空間」や「外乱を遮断するための空隙」として利用されている。従来、このような中空構造の形成に用いる接合材には、封止性能や耐熱性に優れた金が使用されてきたが、材料コストの低減や設計自由度向上の観点から、樹脂による接合技術の検討がさまざまな企業で進められている。
一方、一般的な封止樹脂として使用されるエポキシ樹脂は、耐熱性や機械強度が十分でない他、熱変化により変形や応力が発生しやすいという課題があった。
そこで東レは、ポリイミドの分子設計および感光設計を最適化することで、高耐熱性と低ストレス性を両立した接合材を開発した。同材料の開発品は、フォトリソグラフィー工程を用いた微細パターン形成と接合を一体で設計可能な感光性材料で、感光性材料を用いた中空構造作製工程において使用する接合材での適用が想定されている。
今回の開発品は、ポリイミドが本来有する高い絶縁性および耐熱性に加え、低ストレス設計とすることで、熱履歴に伴う反りを抑制でき、従来の樹脂と比較して、デバイスの長期信頼性向上が期待できる。
さらに、高い機械強度を有するため、接合部の狭線化が可能となり、デバイスの小型化/高密度化にも役立つ。同材料の開発品はPFASフリーかつNMPフリーであり、環境/安全配慮要求の高まりに対応した材料仕様を実現している。
PFASとは、耐熱/撥水などの特性を持つフッ素系化学物質群の総称だ。NMPはポリイミド材料の溶媒として利用できるが、環境/安全面の配慮から低減/代替が求められている。
東レは、今回開発した材料を、半導体デバイスや電子部品に適した各種樹脂製品に新たにラインアップとして加える。今後、試作やMEMS関連顧客へのサンプル提供を進め、2027年の材料認定、2029年の量産開始を目指す。
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