三菱ケミカルグループの決算で中東情勢悪化により生じる化学品への影響が明らかにされた。ナフサ調達に「手応え」を感じた同社が指摘する、顧客への影響とは――。
三菱ケミカルグループは2026年5月13日、オンラインで記者会見を開催し、2026年3月期(2025年4月1日〜2026年3月31日)の決算を発表した。併せて2027年3月期(2026年4月1日〜2027年3月31日)の業績予想やこれに対する中東情勢の影響などについて説明した。
2026年3月期の売上高は前年同期比6%減の3兆7040億円で、営業利益は同79%減の301億円となった。営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除外したコア営業利益は同2%減の2250億円を記録した。
2026年3月期における世界経済は、米国の通商政策の影響が各地域に広がりを見せた。しかし、米国の底堅い個人消費やAI(人工知能)関連需要に伴う設備投資、日本の雇用/所得環境の改善による個人消費の持ち直しや堅調な企業収益を背景とした設備投資に加え、中国の景気刺激策、欧州の堅調な雇用環境を背景とした安定的な個人消費に支えられ、総じて底堅い経済成長を維持した。
2026年3月以降は中東を中心とした地政学リスクの高まりを受け、一部原燃料価格が高騰するなど、先行き不透明な状況が継続している。
セグメント別では、スペシャリティマテリアルズセグメントの売上高は同1%減の1兆596億円で、コア営業利益は同35%増の323億円となった。同セグメントのコア営業利益は、英国におけるソアノール関連固定資産の減損損失の計上や、インフレなどに伴うコスト増加などがあったものの、前期に計上したジェレストの生産設備/無形資産の減損損失影響の解消が増益に貢献した。
加えて、半導体関連事業などで総じて販売価格が向上したことなどによる売買差の改善、高機能エンジニアリングプラスチックの半導体製造装置用途を中心とした需要の増加や炭素繊維コンポジットパーツなどの増販、各事業の生産拠点の見直しなどによる合理化効果などにより、コア営業利益は増加した。
三菱ケミカルグループ 執行役員チーフファイナンシャルオフィサー 最高財務責任者(CFO)の木田稔氏は「スペシャリティマテリアルズセグメントでは、中東情勢悪化の影響は顕在化していないが、一部懸念される部分はある」と触れた。
同セグメントは、アドバンストフィルムズ&ポリマーズサブセグメント、アドバンストソリューションズサブセグメント、アドバンストコンポジット&シェイプスサブセグメントから成る。
アドバンストフィルムズ&ポリマーズサブセグメントでは、販売価格の維持/向上があったものの、ジェイフィルムの株式譲渡とトリアセテート繊維などの事業譲渡に加え、ディスプレイ用途において前期の旺盛な需要の反動減に伴う顧客在庫調整などの影響により、売上高は減少した。
アドバンストソリューションズサブセグメントでは、各種製品の販売価格の維持/向上があったが、一部子会社の株式譲渡、電気自動車(EV)用途の欧米における需要減退による販売数量の減少や、国内を中心とした住宅/建設資材の販売数量の減少などにより、減収となった。
アドバンストコンポジット&シェイプスサブセグメントでは、炭素繊維事業における汎用焼成ラインの一部休止に伴う販売数量の減少などがあったが、高機能エンジニアリングプラスチックにおいて半導体製造装置用途を中心に需要が増加したことに加え、炭素繊維コンポジットパーツの増販や、為替影響などにより、売上高は増加した。
MMA&デリバティブズセグメントの売上高は同16%減の3519億円で、コア営業損益は15億円の損失となった。MMAモノマーなどの市況の下落による売買差の悪化や、総じて需要が減退したことに伴う販売数量の減少などの影響があったとする。
同セグメントは、MMAサブセグメントとコーティング&アディティブスサブセグメントで構成される。MMAサブセグメントではMMAモノマーなどの市況下落を主要因として売上高が減少した。コーティング&アディティブスサブセグメントでは、販売価格の維持/向上があったが、塗料や接着剤、インキ、添加剤用途などの需要が減退したことによる販売数量の減少で、売上高は減った。
ベーシックマテリアルズ&ポリマーズセグメントの売上高は同20%減の7907億円で、コア営業損益は42億円の損失となった。同セグメントでは、マテリアルズ&ポリマーズサブセグメントにおいて在庫評価損益が悪化したことやインフレなどに伴うコスト増加、酸化エチレンとエチレングリコール類製造設備における減損損失の計上などがあった。しかし、ポリオレフィンなどにおける原料と製品の価格差の拡大に加え、炭素事業における在庫評価損益の改善や、同事業の構造改革による売買差改善、コスト削減などにより、前年度と比べてコア営業利益が改善した。
同セグメントは、マテリアルズ&ポリマーズサブセグメントと炭素サブセグメントで構成される。マテリアルズ&ポリマーズサブセグメントでは、高純度テレフタル酸事業における特定子会社の株式譲渡の影響に加え、原料価格の下落に伴い販売価格が低下したことや、ポリオレフィンなどの販売数量の減少、為替影響などにより、減収となった。
炭素サブセグメントでは、コークス事業における特定子会社の株式譲渡の影響やコークス生産能力縮小に伴う販売数量の減少、原料価格の下落と需要の低迷に伴うコークスの販売価格低下などにより、売上高が減少した。
ケミカルズ事業の売上高は同11%減の2兆3515億円で、コア営業利益は同43%減の243億円となった。同事業の産業ガスセグメントの売上高は同4%増の1兆3525億円で、コア営業利益は同8%増の2007億円を記録した。同セグメントは、国内外の需要が軟調に推移したことによる減販があったが、為替の影響や各地域で推進する価格マネジメントの効果に加え、欧州におけるプラントエンジニアリング会社やオーストラリアとニュージーランドにおける産業ガス事業などを買収の上、連結した影響により売上高は増加した。
同セグメントのコア営業利益は、米国における電力単価などの上昇や欧米を中心とした数量差の悪化はあったが、価格マネジメントとコスト削減の効果により増えた。
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