流通業界で初めてとなるISACが誕生 サイバーインシデントを横のつながりで対応製造マネジメントニュース

アサヒグループジャパン、NTT、トライアルホールディングス、三菱食品は流通ISACを2026年4月中に設立発起人各社とともに設立すると発表した。同組織は、流通業界全体でサイバーセキュリティにおける「集団防御力」の向上を目指していく。

» 2026年04月13日 06時15分 公開
[坪田澪樹MONOist]

 アサヒグループジャパン、NTT、トライアルホールディングス、三菱食品は2026年4月6日、東京都内とオンラインで会見を開き、サイバーセキュリティ強化に向けて製造/卸/小売業界横断で情報共有や分析を行う流通ISACを、同年4月中に設立すると発表した。同組織は、流通業界全体でサイバーセキュリティにおける「集団防御力」の向上を目指していく。

 なお、流通ISACの設立発起人として、アサヒグループジャパン、花王、サントリーホールディングス、スギホールディングス、トライアルホールディングス、PALTAC、三井物産流通グループ、三菱食品が関わっている。加えて、NTTとNTTドコモビジネスが事務局として運営に参画する。

流通ISACの設立発起人一覧[クリックして拡大] 出所:流通ISAC

 流通ISACは、飲食料品や日用品などを中心とした流通業界における、企業の垣根を越えた情報共有や分析を行う枠組みとして設立した、流通業界では初めてとなるISAC(Information Sharing and Analysis Center)だ。

 近年、サイバー攻撃が高度化/巧妙化を続けており、サプライチェーン上の特定の企業が狙われることによって、サプライチェーン全体の事業活動に大きな被害をもたらす事例が増えている。飲食料品や日用品などを中心とした流通業界は、製造/卸/小売が密接に連携する三層構造で成り立っている。そのため、1社で発生したサイバーインシデントが製造停止や物流混乱、店舗の営業停止など、社会/国民生活に広い範囲で影響を及ぼしてしまう。

NTTの島田明氏

 NTTの代表取締役社長 社長執行役員CEOの島田明氏は「日本国内でのサイバー攻撃関連の通信数は増加傾向にあり、2024年においては各IPアドレスに約13秒に1回の攻撃が試みられていたといわれている。セキュリティ対策は自社だけの問題ではなくなってきており、取引先やグループ会社のランサムウェア感染、取引先経由での機密情報の漏えいといったサプライチェーン上のセキュリティリスクが深刻化している」と語る。

サイバー攻撃の推移について[クリックして拡大] 出所:NTT

 だが、サイバーインシデントへの対応については、個別の企業/団体だけの対応には限界がある。そのため、攻撃者のIoC(Indicator of Compromise)情報や流通業界で狙われやすい脆弱性情報がISAC参画企業に迅速に共有され、業界を横断したセキュリティ対策に関する情報共有/分析を行うことで、サプライチェーン全体でサイバー攻撃に対する防御能力の向上が見込まれるISACの取り組みに注目が集まっている。

 このような背景から、流通業界におけるサイバーセキュリティ対策の強化を目的とした流通ISACが誕生した。

アサヒグループジャパンの濱田賢司氏

 流通ISACは、個社対応の限界を補完し、業界全体としてサイバーリスクに備える枠組みとして、参画企業が信頼関係の下、情報を共有/分析し、実効性のある対策につなげていく。製造/卸/小売の三業態を通じたサイバー攻撃の兆候や被害事例を把握/共有し、業界内での注意喚起と初動対応の高度化を目指す。

 また、各種セキュリティガイドラインに対する各社の取り組みや知見を集めて、業界特性を踏まえた実践的な指針として整理/共有する。加えて、実務担当者や経営層/管理者の情報セキュリティに関するスキル向上を目指して勉強会や演習会などを実施し、現場の対応力の底上げを狙っている。

 流通ISAC設立後は、目的ごとにワーキンググループを設置して年間を通した議論を深めることにより、定期的な成果報告をISAC参画企業に対して実施予定だ。これにより、参画企業は流通業界に特化した対策ナレッジを得られる。

流通ISAC設立の目的[クリックして拡大] 出所:流通ISAC

 アサヒグループジャパン代表取締役社長 兼 CEOの濱田賢司氏は「流通ISACを通じて、業界横断での情報セキュリティの強化を図り、有事の際の初動対応を迅速化することで、安定供給というメーカーの責任を果たしていきたい。また、安全なシステム環境が整うことは製造業全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)やデータ活用によるイノベーションの加速にもつながる。本日設立される流通ISACが業界の垣根を越えた共創の枠組みとして機能し、流通業や社会全体の安心/安全につながることを心から期待をしている」と述べている。

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