スマートファクトリー教育を実践する工学院大学 その成果はソーラーカーでもモノづくり教育の現場(3/4 ページ)

» 2026年04月06日 08時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

基礎教育がそのまま実践に ソーラーカープロジェクトで見る成果

 工学院大学のスマートファクトリー教育は、授業と課外プロジェクトが分断されておらず、基礎教育がそのまま実践につながっている点が大きな特長となっている。その成果を示す代表例として紹介されたのが、学生プロジェクトである工学院大学ソーラーチームの取り組みだ。

 工学院大学ソーラーチームは、太陽光で走るソーラーカーを設計/製作して、国内外のレースに挑戦する同大学を象徴する学生プロジェクトの一つだ。

 ソーラーカーレースの中でも世界最高峰といわれる「Bridgestone World Solar Challenge」(以下、BWSC)は、オーストラリアのダーウィンからアデレードまで約3000kmをおよそ1週間かけて走行するレースで、2年に1度開催される。工学院大学ソーラーチームは2025年8月に開催されたBWSC 2025に出場(通算6度目)し、新車両「Cygnus(シグナス)」でこの過酷なレースに挑んだ。

世界最高峰のソーラーカーレース「Bridgestone World Solar Challenge」について 世界最高峰のソーラーカーレース「Bridgestone World Solar Challenge」について[クリックで拡大] 出所:工学院大学

 Cygnusは同大学にとって7号機目の車両となり、サイズは全長4570×全幅1820×全高1025mm、重量は約145kgとなる。非対称カタマラン型(双胴船型)のデザインを採用し、横風に対する高い安定性を実現している。また、非対称構造を生かしたソーラーパネルの配置によって、朝から昼にかけての発電効率を高め、レース時間帯の発電量で優位性を発揮できる設計になっているという。

工学院大学ソーラーチームにとって7号機目となる「Cygnus」 工学院大学ソーラーチームにとって7号機目となる「Cygnus」[クリックで拡大]
工学院大学 機械システム工学科 3年/工学院大学ソーラーチーム リーダーの島田琉海氏 工学院大学 機械システム工学科 3年/工学院大学ソーラーチーム リーダーの島田琉海氏

 工学院大学ソーラーチームでは、1年生と2年生が主体となって車両の設計/製造を行っている。工学院大学 機械システム工学科 3年/工学院大学ソーラーチーム リーダーの島田琉海氏は「1年生の後半からFusionを使い始め、2年生ではスマートファクトリー教育を受講しながらCygnusの足回り設計の主担当を務めた。2年生の終わりには足回りやボディーの製造まで手掛けて車体を完成させ、3年生でオーストラリアの世界大会(BWSC 2025)に出場した」と話す。

 Cygnusの足回りの精密部品(ジュラルミン製)については、外注に頼らず、ものづくり支援センターの5軸マシニングセンタを用いて内製化(学内製作)した。さらに、ボディー製造でも自作の窯を用いて炭素繊維の積層を行い、真空引きや温度制御などの工程を経て学内で成形した。ボディー型の総重量は約3t(トン)にもなったという。「ボディーが形になった瞬間、チーム全員で歓声を上げた」と島田氏は振り返る。このように、学生自らが設計したものを、自分たちの手で形にする経験、そして、完成に至るまでの多くの試行錯誤から得られる気付きや学びが、“現場力”を備えたエンジニア育成につながるといえる。

工学院大学ソーラーチームでは、1年生と2年生が主体となって車両の設計/製造を行う 工学院大学ソーラーチームでは、1年生と2年生が主体となって車両の設計/製造を行う[クリックで拡大] 出所:工学院大学
炭素繊維ボディーも学内で製作した 炭素繊維ボディーも学内で製作した[クリックで拡大] 出所:工学院大学

 設計面では、2年生が中心となり、Fusionの多くの機能を活用している。CADによるモデリングはもちろんのこと、「Fusion Team」による共同作業、過去の設計資産やアイデアの共有、工程管理、CAMとスマートファクトリーとの連携、ジェネレーティブデザイン、構造解析(CAE)、レンダリング、「Autodesk CFD」との連携など、設計から製造までの全工程をFusion上で一貫して行ったという。

Autodesk Fusionの多くの機能を活用して車両の設計/製造に役立てたという 「Autodesk Fusion」の多くの機能を活用して車両の設計/製造に役立てたという[クリックで拡大] 出所:工学院大学

 基礎教育がそのまま実践につながるスマートファクトリー教育の強みは、オーストラリア現地でのトラブル解消にも生かされた。

「初の公道試走を控えた前日、サスペンション部の破損が発生したが、学内製作の経験を生かし、Fusionで再設計し、限られた時間の中で、現地で修復することができた。修理後には大会本部に対して破損原因と再発防止策を明確に説明し、公道試走の許可を無事に取得できた」(島田氏)

自ら設計し、形にする学内製作の経験は現地でのトラブル対応にも生かされた 自ら設計し、形にする学内製作の経験は現地でのトラブル対応にも生かされた[クリックで拡大] 出所:工学院大学

 このように、Fusionを使い始めてからわずか1年半で、設計/製造/検証、そして現地修理まで一貫して対応できるようになったという。「私自身も非常に驚いているが、Fusionを中心とした環境があったからこそ実現できたと思う」と島田氏は手応えを語る。

短期間で車両の設計/開発を行い、実践(世界大会)へ 短期間で車両の設計/開発を行い、実践(世界大会)へ[クリックで拡大] 出所:工学院大学

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