スマートファクトリー教育を実践する工学院大学 その成果はソーラーカーでもモノづくり教育の現場(1/4 ページ)

少子高齢化や人手不足が進む中、設計、解析、製造を分断せず実装まで担える人材の育成が求められている。工学院大学では「Autodesk Fusion」を中核にスマートファクトリー教育を展開し、一気通貫のモノづくりを推進。その成果は学生プロジェクトのソーラーカー開発にも表れている。

» 2026年04月06日 08時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 オートデスクと工学院大学は2026年3月16日、工学院大学 八王子キャンパス(東京都八王子市)において、両者が共同で進めるモノづくり教育の取り組みを紹介するプレスツアーを開催した。設計から製造までを一体で扱う教育内容と、その実践の場が公開された。

 冒頭、工学院大学 機械システム工学科 教授/工学院大学ものづくり支援センター センター長/学生プロジェクト運営委員会 委員長/工学院大学ソーラーチーム 顧問の濱根洋人氏は、設計から製造までを一気通貫で学べる同大学のスマートファクトリー教育の取り組みについて説明した。

オートデスクと工学院大学は、工学院大学 八王子キャンパスでスマートファクトリー教育に関するプレスツアーを開催し、工学院大学ソーラーチームの取り組みなどを紹介した(画像は関係者の集合写真) オートデスクと工学院大学は、工学院大学 八王子キャンパスでスマートファクトリー教育に関するプレスツアーを開催し、工学院大学ソーラーチームの取り組みなどを紹介した。工学院大学ソーラーチームのメンバーおよび工学院大学附属中学校・高等学校の学生、関係者による集合写真[クリックで拡大]

なぜ、スマートファクトリー教育が必要なのか?

工学院大学 機械システム工学科 教授の濱根洋人氏 工学院大学 機械システム工学科 教授の濱根洋人氏

 まず、濱根氏はスマートファクトリー教育を必要とする背景として、日本が直面する4つの課題について説明した。

 1つ目の課題は「少子化/高齢化」である。日本の総人口は今後50年で約4000万人減少すると予測されている。2020年に約1億2600万人だった人口は、2070年には約8700万人になる見通しで、東京、神奈川、大阪、愛知の4都府県の人口が喪失する規模に相当するという。こうした実情を踏まえ、濱根氏は「現在の学生が60歳になるころには労働人口が大幅に減少する。そのため、今の学生だけでなく、その次の世代も含めて教育しなければ、この社会構造に対応できない」と警鐘を鳴らす。

 続く、2つ目の課題は「人手不足」だ。2025年時点で75%以上の企業が人手不足を感じているとの調査結果があり、ITやAI(人工知能)分野では2030年に最大79万人の人材不足が見込まれているという。

 3つ目の課題は「企業の人材育成」である。管理職の負担や指導できる人材不足、指導ノウハウ不足などを背景に、新人教育の時間を十分に確保できない企業が多いという。また、人材開発予算の減少や適切な教育機関の不足といった問題にも企業は直面している。

 そして、4つ目の課題は「第5次産業革命の到来」だ。CPS(サイバーフィジカルシステム)やDX(デジタルトランスフォーメーション)、AIの進展により「インダストリー5.0」の時代が到来し、人間による最小限の介入で工場を運用するスマートファクトリーの実現がより一層求められている。そのため、スマートファクトリーの実現を推進できるリーダーの育成が欠かせない。「ドイツ、中国、米国は既にスマートファクトリー化を進めているが、日本ではそれを開発/管理できる人材の育成が遅れている。日本の競争力を引き上げるためにはリーダーの育成が重要だ」と濱根氏は指摘する。

 これら4つの課題を踏まえ、工学院大学は文部科学省の採択(※1)を受け、「スマートファクトリーを構築できる世界的リーダーの育成」を目的とした教育プログラムの開発に取り組み、2024年度から文部科学省の支援事業として、スマートファクトリー教育を本格的に開始した。

※1:2023年度に文部科学省 教育装置整備事業「スマートファクトリを開発・管理するリーダ育成の教育事業における5軸マシニングセンタ」が採択された。

文部科学省の支援事業として「世界初」をうたうスマートファクトリー教育を開始した工学院大学 文部科学省の支援事業として「世界初」をうたうスマートファクトリー教育を開始した工学院大学[クリックで拡大] 出所:工学院大学

 工学院大学のスマートファクトリー教育では、新宿キャンパス(東京都新宿区)と八王子キャンパスをIT(情報技術)で接続して、少人数で工場を遠隔操作/管理するスマートファクトリーを構築し、それを実践の場として学生らの教育に役立てている。

 この構想の基盤として、工学院大学はオートデスクの製造業向けクラウドプラットフォーム「Autodesk Fusion」(以下、Fusion)を中核に据え、CAD/CAMのクラウド型マネジメント、各種シミュレーション、加工工程、精度検査の集約化をネットワーク上で管理/操作できる環境を構築。これにより、チームの生産工程、生産管理、実際の製造現場に即したマネジメントを学びながら、スマートファクトリーを構築できる能力を養う。

工学院大学が推進するスマートファクトリー教育のイメージ 工学院大学が推進するスマートファクトリー教育のイメージ[クリックで拡大] 出所:工学院大学

 濱根氏は、Fusionを採用した理由について「オートデスクは単なるCADソフトウェア企業ではなく、Design&Make(デザインと創造)を一貫して支えるプラットフォーム企業であり、Fusionを使うことで『考え、作り、動かす』を実体験できる。『図面を描くだけの人材ではなく、自ら設計し、自ら加工し、自ら動くものを完成させられる技術者を育てたい』という工学院大学の思想と一致している」と説明する。

スマートファクトリー教育の中核に「Autodesk Fusion」を採用した狙い スマートファクトリー教育の中核に「Autodesk Fusion」を採用した狙い[クリックで拡大] 出所:工学院大学
オートデスクの「Autodesk Fusion」を採用した理由 オートデスクの「Autodesk Fusion」を採用した理由[クリックで拡大] 出所:工学院大学
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