そこで、味の素グループでは「工場業務の働き方改革」「マネジメントの標準化/高速化」「高度なデータの利活用」という3つのテーマを掲げた。
「工場業務の働き方改革」では、自動データ取得やペーパーレス化による現場改善などを通じて、“いつでもどこでも”オペレーションが可能になる姿を目指した。「マネジメントの標準化/高速化」では業務、KPI、マネジメントを標準化させ、従来の月次から日次/直次単位でのSTPD短サイクル化に取り組んだ。「高度なデータの利活用」においてはBIツールを利活用した高度なデータ分析による生産性向上を目標とした。
これらのテーマから目指す姿は、オペレーターの業務負荷を減らし、効率的/短サイクルの改善によってパフォーマンスの高い状態を維持する他、場所に縛られない働き方となった。
具体的には工場業務にIoT、スマートフォンのアプリ、BIなどのデジタルツールとデータ利活用を組み込み、業務負荷軽減と改善スピードアップを両立させたオペレーション改革を支えるシステム構築を図った。そのため「全設備稼働データの自動記録」「日次の現場帳票のスマホアプリ化」「毎日の業務が終わった瞬間オペレーションを振り返る」「ダイナミックにKPIを表示/分析し課題を発見」「いつでもどこでもリモートで現場管理/承認」という5つの施策を実施した。
APPLEにおいてはデータコレクター、オペレーションレコーダー、ファクトアナリスト/ダッシュボード、プロダクションレビュアーの4つの機能をスクラッチで開発した。開発当初はパッケージソフトも検討したが、さまざまなメーカー、設備、規格が乱立しているなかで既存の設備から同じ仕組みで一括してデータを集められるものがなかったという。現場記録もさまざまな要件により緻密に設計されており、一般的な業務フローに当てはめることは難しく、これらの課題を一気に解決するにはスクラッチ開発が最適と判断した。
システムアーキテクチャは、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)からラインごとに設置しているエッジゲートウェイを介して、AWSクラウドを活用した基盤上に設備データの収集/蓄積/加工している。オペレーターが記録する工程管理情報に関しても、スマホのオペレーションレコーダーアプリを介してデータの収集、蓄積、加工を実施。これらのデータを評価分析し工程管理や改善に生かしている。評価分析には使途に応じてMicrosoft Power BI、Amazon QuickSight、Amazon Managed Grafana などを使い分けている。
「今までデータ化されていなかったオペレーション、設備稼働データをAWS上に集約して、そのデータを活用してリアルタイムにさまざまな分析が可能となった」(海老澤氏)
最後に海老澤氏は、生産設備データ標準化への取り組みを紹介した。通常、生産設備からデータを取得する場合、設備の制御を担うPLCからデータを取得する。しかし、PLCは各設備メーカーで独自の制御プログラムが使われている。
「例えば数量や温度のデータを取得しようとすると、そもそもデータがなかったり、データの意味合いが少し異なったりするケースが散見される。生産設備のデータがばらばらで、欲しいデータは存在するのか、どこにあるのか、意味合いは一致しているのか設備ごとに確認しなければならない」(海老澤氏)
それらの課題を解決するため、味の素グループでは生産設備データの標準化について、食品業界全体の生産性/品質向上に寄与する業界横断の取り組みとして関連省庁や業界他社と協議を重ねた。そして、2025年7月に味の素、味の素食品、カルビー、サントリーホールディングス、ハウス食品、明治、日本包装機械工業会によって生産設備データ標準化コンソーシアムを設立し、生産設備データの標準規格の策定などに取り組んでいる。
食品製造設備のデータ標準化で利活用促進、味の素やサントリーなど6社が協力
包装設備にスマートファクトリー、JAPAN PACK 2025で訴えるIoT化の潮流とDX/GX
さまざまな設備データを標準接続で収集、PLCやロボットなど約80社に対応
包装機械でのデータ活用加速へ、日本包装機械工業会がIoT標準化指針を定めた理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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