日本包装機械工業会では、2024年4月に「包装システムにおけるIoT標準化に関する指針(案)」を公開した。その狙いについて、ガイドライン策定を担当した、日本包装機械工業会 技術委員会 IoTワーキンググループに話を聞いた。
工場のスマート化が進む中、工場内で使用されるさまざまな機械についても、IoT(モノのインターネット)などを活用し、工程の最適化や生産性向上などに役立てることが求められている。しかし、各種機械で得られるデータフォーマットやタイムスタンプなどが異なれば、データの活用は容易ではなくなる。
こうした状況に対応しようと、日本包装機械工業会では、2024年4月に「包装システムにおけるIoT標準化に関する指針(案)」を公開した。その狙いについて、ガイドライン策定を担当した、日本包装機械工業会 技術委員会 IoTワーキンググループ(WG)と、そのリーダーである協和電機 取締役の福井健二氏に話を聞いた。
日本包装機械工業会は包装機械関連のメーカーや関連機器メーカーなどが参加する業界団体で、正会員企業が142社、賛助会員企業が115社参加している。包装機械業界では、従来包装機械メーカーが独自技術で競争することで新たな技術を生み出し、進化してきた。
日本包装機械工業会 技術委員会 IoT WGのリーダーである協和電機 取締役の福井健二氏は「包装機械は従来、各企業が独自で進化を進めており、その多様性が新たな技術革新へとつながり、世界的な強みを築いてきた。さらに、商習慣的にも、包装機械が多く用いられる食料品業界や飲料業界、医薬品業界などは、ユーザー企業の要望にきめ細かく応じる個別案件が多く、それに応じられる点も企業としての強みであり、横断的な標準化が進みにくい状況があった」と包装機械業界を取り巻く環境について述べている。
しかし、IoTやAI(人工知能)などが進展しスマートファクトリー化へと進む中で、工場全体でさまざまな機械からのデータを効率的に活用する動きが広がってきており、包装機械業界でもデータなどの「標準化」を進め、共有を容易に行えるようにする必要が生まれてきた。
福井氏は「食品業界や医薬品業界でも先進的な企業では、個別で製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める動きが既に生まれており、先進的な取り組みも数多く行われている。しかし、そうした一部の先進的企業を除けば全体的には製造業の中でもデジタル化が遅れている業界だといえる。そのため、DXに関するコストや人材、知見などの問題があり、そういう動きを進めたくても進められない企業が多いのが現実だ」と説明する。
ただ、独自で製造現場のDXが進められない企業に対し、包装機械メーカーそれぞれが、個別でデータ周辺のソリューションを構築するのは、逆に包装機械メーカー側での負荷が大きくなりすぎて難しくなる。そこで、ある程度データの受け渡しについては標準化を進められるように、2022年8月から日本包装機械工業会内で議論を開始し、2024年4月にまとめたのが「包装システムにおけるIoT標準化に関する指針(案)」となる。
福井氏は「異なるデータタイプやセキュリティ対策などの技術的課題、カスタム対応によるコストアップなどの経済的課題、リソース不足などの人的課題が包装機械メーカー、ユーザー企業共通の課題としてあった。そのため、データ活用をより効率的に行える環境づくりが必要だと考えた。個社でDXを進められない企業でも推進していけるようにするためには、できる限り標準化を進めるべきだと考え、今回の指針案をまとめた」と語っている。
標準化を進めることで、以下の5つのメリットを将来的に得ることを想定しているという。
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