本稿では、「ITmedia Virtual EXPO 2026 冬」において、「味の素グループが実現するスマートファクトリーと生産設備データ標準化への取り組み」と題して味の素食品 DX戦略推進部 変革推進グループ長の海老澤明彦氏が行った講演の模様を一部抜粋して紹介する。IoT技術とデータ活用による生産現場の働き方改革、改善スピード向上への取り組みについて説明された。
アイティメディアにおける産業向けメディアのMONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、Tech Factoryは2026年2月10日〜3月12日、国内最大級の製造業向けオンライン展示会「ITmedia Virtual EXPO 2026 冬」を開催した。
本稿では、「味の素グループが実現するスマートファクトリーと生産設備データ標準化への取り組み」と題して味の素食品 DX戦略推進部 変革推進グループ長の海老澤明彦氏が行った講演の模様を一部抜粋して紹介する。講演では、味の素グループにおけるスマートファクトリーの事例として、IoT(モノのインターネット)技術とデータ活用による生産現場の働き方改革、改善スピード向上への取り組みについて紹介した。
味の素グループはアミノ酸メーカーとして高品質のアミノ酸の独創的な製法/利用法の開発を通じて事業領域を拡大しており、国内外で食品、アミノサイエンスを柱とした幅広い事業を展開している。31の国と地域に121の法人を開設、生産工場も24の国と地域に118カ所を構え、2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の売上高は約1兆5300億円に上った。
味の素グループにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進活動は、市場競争力、効率性、生産性を高めることを目指し、グループ全体が共通のゴールおよびステップに基づいて進めるDX(n.0)モデルを採用している。
DX1.0の全社オペレーション変革では、全ての変革の基盤となるオペレーショナルエクセレンスを導入し、顧客価値の創出、従業員のスキルや働きがい、組織としてのパフォーマンスを向上させる。DX2.0のエコシステム変革では、外部のパートナーと適切に連携し、持続的なエコシステム構築に取り組む。
DX3.0の事業モデル変革では独自の技術にデジタル技術を組み合わせて、新事業モデルの確立を図る。DX4.0の社会変革では経済価値と社会価値の両輪から業界全体を底上げする。その中で、DX3.0の取り組みとして味の素グループが展開するスマートファクトリーでは、生産の進化をM1.0〜M4.0の4つの段階に分けて考えているという。
M1.0は加工プロセスに焦点を当て、人手作業で行っていた生産を工業化してスケールアップさせる段階となる。M2.0は製造ラインに目を向け、連なった複数の設備/プロセスをより安定的に稼働できるように改善する段階だ。M3.0は工場全体の進化であり、デジタル技術、スマート化技術を駆使して、ロボット活用による自動化、工程稼働データを可視化/利活用した改善の高度化などを指す。
最終的にM4.0の段階では、工場や生産部門といった枠を超え、バリューチェーンとの連携を深めることによる価値の創出を図る。具体的にはサプライチェーンやエンジニアリングチェーンとより密接につながったエコシステムの一員として参画、貢献できるようにすることが目標となる。「われわれはM3.0からM4.0の継続的な進化をスマートファクトリーと考えている」(海老澤氏)。
続けて海老澤氏は、味の素グループの包装工程で全社プロジェクトとして展開している製造DX「APPLE(Ajinomoto Packaging Performance Leading system)」の取り組みを紹介した。2020年に本格稼働した三重県四日市市の「ほんだし」新工場のコンセプトとして、“IoT活用によるサプライチェーン全体と「つながる工場」の構築”を掲げたことが包装管理システムであるAPPLE誕生のきっかけとなった。
当時はIoT技術の進化から生産ビッグデータが注目されており、同工場でも収集したデータを活用して運転条件の最適化を目指した。しかし、必要なデータが足りずPoC(概念実証)は失敗に終わった。「手段先行では難しいことを痛感した。目的を考え直し、現状の課題から目指す姿を再設定した」(海老澤氏)。そこで包装工程の課題を解決し、飛躍的な生産性向上を目指すというAPPLEの取り組みに行き着いた。
当初の包装工程では、毎日10〜20枚の紙帳票を記入しなければならず、トラブル対応にも追われ“時間がない”という状況だった。管理者も現場に行かないと状況が把握できず、承認作業ができないという問題を抱えていた。設備としては充てん機、包装機など多くの機器が導入されたが、それぞれメーカーが異なるため規格が乱立。STPD(現状把握/考察/計画/実行)サイクルが長く、データ活用やKPI/マネジメントにおいても問題が生じていた。
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