MEMSへの適用が有望視されるHOPGだが、vdW積層材料はマイクロレベル試験片の作製が難しく、試験方法も確立されていないため、中長期的な信頼性、特に繰り返しの負荷に対する疲労特性はこれまで解明されていなかった。
今回の研究成果では、HOPGのマイクロレベル試験片の作製に成功した上で、試験片に繰り返し曲げ負荷を与えてせん断変形させるための新たな試験方法を確立した。これにより、HOPGが負荷を加える回数の増加に伴い軟化するものの、時間の経過とともに硬さを含む機械的強度が回復する「自己復元特性」を持つことを世界で初めて確認したとする。
HOPGのマイクロレベル試験片は、FIB(集束イオンビーム)加工によって、片持ちはりの形状となるようにHOPGブロックから作成した。サイズは、片持ちはりの幅が1μm、長さが3μm、厚さが0.6μmで、FIB加工前のHOPGブロックは約1700層のグラフェンが積層したものだ。
試験は、一方向のみに変形させる負荷方法(片振り)と、両方向に変形させる負荷方法(両振り)という2つの方法により電子顕微鏡内で実施した。片振り試験では、1万回の負荷を与えた後に38日間放置し、次に少し負荷を大きくして3000回の負荷を与えた後に30分間放置し、さらに負荷を大きくして3000回の負荷を与えた(合計1万6000回)。両振り試験では、1000回の負荷を与えて7日間放置した後、負荷を大きくして1000回の負荷を与えました(合計2000回)。
その結果、どちらの試験でも、負荷を与えた回数が増えるのに伴って試験片が柔らかくなった(変形抵抗が低下した)。片振り試験では1万回で初期の66%、両振り試験では1000回で41%まで試験片が軟らかくなることが明らかになった。この軟らかくなった状態から、片振り試験では、1万回の負荷後38日間放置することで変形抵抗が91%まで回復した。両振り試験では、1000回の負荷後7日間で97%とほぼ完全に回復したという。また、片振り試験では、1万3000回目の負荷から1万3001回目の負荷まで放置した時間は30分だったものの、変形抵抗が70%から82%に回復したことを確認した。これにより、HOPGが軟らかくなった状態から時間の経過とともに回復するという自己復元特性を世界で初めて確認できたとしている。
なお、試験は、電子顕微鏡内での負荷印加やその後の放置を含めて基本的に室温かつ真空下で行っている。ただし、vdW積層材料の自己復元特性については「真空中や大気中によらない普遍的な現象ではないかとみている」(京都大学大学院 工学研究科 固体力学研究室 教授の平方寛之氏)という。
今後は、HOPGの疲労特性に関してさらに研究を深めるとともに、二硫化モリブデン(MoS2)や六方晶窒化ホウ素(h-BN)などHOPG以外のvdW積層材量についても自己復元特性を確認する方針である。
なお、今回の研究成果は、ダイヤモンドや関連材料に関する国際的な学術誌「Diamond and Related Materials」に採択された。
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