世界初 窒化炭素をガラス基板上に固定化してCO2からエネルギー物質を生成研究開発の最前線(1/2 ページ)

三菱電機と東京科学大学は、可視光を吸収する有機半導体である窒化炭素を用いた人工光合成触媒系を平面状に形成および固定化し、CO2からエネルギー物質のギ酸を生成させることに成功した。

» 2025年07月29日 07時15分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 三菱電機と東京科学大学は2025年7月28日、オンラインで説明会を開き、可視光を吸収する有機半導体である窒化炭素を用いた人工光合成触媒系を平面状に形成および固定化し、CO2からエネルギー物質のギ酸を生成させることに成功したと発表した。

ギ酸とは ギ酸とは[クリックで拡大] 出所:三菱電機

酸化チタン層を活用し、ガラス基板上に窒化炭素を固定

 近年、国内ではカーボンニュートラル社会の実現に向けた有効な手段として、太陽光のエネルギーを化学物質に蓄積する人工光合成が注目されている。人工光合成研究の主流は、太陽光を光触媒に照射し、水を水素と酸素に分解する反応を利用して発電する技術だ。しかし、この方法では主に紫外域の光を使用しているケースが多く、太陽光の全てをエネルギーに活用できていない。

 そこで、三菱電機と東京科学大学の研究グループは、「太陽光の中に含まれる可視光域の光もエネルギーに変えたい」や「(使用する触媒は)貯蔵、運搬が容易な化学物質にしたい」という思いから、今回の研究を開始した。

 今回の研究では、ホウケイ酸ガラス基板上に、窒化炭素、ルテニウム錯体、酸化チタンを組み合わせた複合光触媒を固定化する技術を開発した。同技術は、ホウケイ酸ガラス基板上に酸化チタンを塗布した後、オーブンで加熱し酸化チタン層を形成する。次に、酸化チタン層の上にポリマー状の窒化炭素(PCN)を塗布し、オーブンで加熱して、窒化炭素層を作る。これにより、ホウケイ酸ガラス基板と複合光触媒から成る2層構造の光触媒パネルとする。

ホウケイ酸ガラス基板上に複合光触媒を固定化する技術のイメージ ホウケイ酸ガラス基板上に複合光触媒を固定化する技術のイメージ[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 三菱電機 先端技術総合研究所 環境システム技術部 水質制御グループの澤中智彦氏は「ガラス基板上に直接窒化炭素を固定化することが難しかったため、酸化チタンの層を介した2層構造を採用した。窒化炭素を平面上に固定化して、可視光やCO2などからギ酸を生成した事例は世界初であると考えている」と語った。

40mmの光触媒パネル 40mmの光触媒パネル[クリックで拡大] 出所:三菱電機
光触媒パネルの構造 光触媒パネルの構造[クリックで拡大] 出所:三菱電機
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