段差乗り越え性能が7.5倍に 都産技研のトー角可変機構搭載全方向移動ロボットファクトリーイノベーションWeek2026

東京都立産業技術研究センターは「第10回 ロボデックス」において、トー角可変機構を搭載した全方向移動ロボットを披露した。同ロボットは高い段差の乗り越え性能を持つとともに姿勢を変えずに全方向に移動ができ、段差乗り越え性能に関しては7.5倍向上している。

» 2026年01月22日 06時15分 公開
[坪田澪樹MONOist]

 東京都立産業技術研究センター(都産技研)は「第10回 ロボデックス」(2026年1月21〜23日、東京ビッグサイト)において、トー角可変機構を搭載した全方向移動ロボットを披露した。同ロボットは高い段差の乗り越え性能を持つとともに姿勢を変えずに全方向に移動ができ、段差乗り越え性能に関しては7.5倍向上している。

都産技研(東京都立産業技術研究センター)が披露したトー角可変機構を搭載した全方向移動ロボットのデモンストレーションの様子。[クリックで再生]
都産技研の萩原颯人氏と会場で披露された全方向移動ロボット

 全方向移動ロボットに多く採用されているメカナムホイールは、車輪の周囲に45度に傾いたローラー(バレル)を複数配置した車輪である。同ホイールが抱えている段差を乗り越えづらいという課題に対して、都産技研はホイールの側面にゴムを取り付けて、ロボットを真上から見たときの車輪の傾きであるトー角を0度の状態から25度まで走行中に変更できるようにすることで、段差を乗り越えられるようにする技術を開発した。都産技研 研究開発本部 情報システム技術部 ロボット技術グループ 研究員の萩原颯人氏は「われわれはメカナムホイールに角度を付けることにより、段差にホイールが差し掛かったときでも、ホイールの端に取り付けたゴムの部分を引っ掛けることで、凸凹した地面でも乗り越えやすくなっている」と語る。

ホイールのトー角が0度の状態(左)とホイールのトー角を変更した状態(右)[クリックして拡大]

 従来のメカナムホイールを用いた全方向移動ロボットだと、高さ8mmの段差もまともに乗り越えることが出来なかったが、トー角可変機構を搭載した全方向移動ロボットは高さ60mmの段差も楽々と乗り越えることができる。ホイールのトー角を25度にすることで推進力が60%向上し、下方に掛かる力も40%低減できるので床を傷つけにくくなる。

 メカナムホイールが段差を乗り越えづらい理由には、移動時の推進力が弱くなるという要因がある。「メカナムホイールは移動時に斜めの力が発生する。例えば、技術詳細にある解説図版に示した緑矢印の方向に移動する際には、赤矢印の方向に働く力同士で相殺してしまい、結果的に緑矢印の方向に進む力が弱くなる。この状態からホイールのトー角を変更することで相殺する方向の赤矢印の力を弱くし、その分緑矢印の方向に進む力を強くしている」(萩原氏)。

トー角可変機構を搭載した全方向移動ロボットの技術詳細[クリックして拡大] 出所:都産技研

 全方向移動ロボットは現在、建設現場などで多く使用されている。特に壁張りロボットのように精度を保ちながらその場で回転して貼り付けるという動作が必要なロボットも存在しており、細かい動きを実現するためにはある程度環境が整った平地の場所でないとメカナムホイールを採用した全方向移動ロボットを動かすことができないという課題が存在していた。

 この課題を解決するために、凹凸のある作りたての現場といった平面ではない場所でも安定して動くことができる全方向移動ロボットの開発に着手した。2024年からトー角可変機構を搭載した全方向移動ロボットの開発に取り組み、2025年の秋頃に同ロボットに使用している技術の一部については特許を出願している。

 開発時の苦労について、萩原氏は「ロボットを開発する上ではゴムの配置を決めるのに苦労した。段差を乗り越えるときに邪魔をしないようにCAD上でゴムの位置を確認し、メカナムホイールの直径や付けたい突起の大きさや個数を算出するために計算式を作成するなどの細かい調整が難しかった」と述べている。

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